時空が歪められたことにより、異なる次元で活躍するスパイダーマンたちが集められた世界を舞台に、主人公の少年マイルスがスパイダーマンとして成長していく姿を描いた長編アニメーション映画。ニューヨーク・ブルックリンの名門私立校に通う中学生のマイルス・モラレス。実は彼はスパイダーマンでもあるのだが、まだその力をうまくコントロールできずにいた。そんな中、何者かによって時空が歪めらる事態が発生。それにより、全く異なる次元で活躍するさまざまなスパイダーマンたちがマイルスの世界に集まる。そこで長年スパイダーマンとして活躍するピーター・パーカーと出会ったマイルスは、ピーターの指導の下で一人前のスパイダーマンになるための特訓を開始する。ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマンの3人が監督を務め、「LEGO（R） ムービー」のフィル・ロード＆クリストファー・ミラーが製作を担当。
（https://eiga.com/movie/88298/より）
10.0／10.0
元から高得点インフレを巻き起こしている当ブログですが、今回はついに問答無用の満点作品を取り上げたいと思う。*1
アカデミー賞長編部門受賞も納得の、スパイダーマンの外伝的作品にして、最高傑作の登場だ。*2
この映画は、スクリーンで繰り広げられる音楽、美術、演出といった映画におけるすべての表現方法が、従来のアニメ作品を1馬身ほど引き離して表現されている。アカデミー常連のピクサーの3Dですら、前時代的に感じるはずだ。
というのも、この映画で試みられているのは「コミック作品を映画として表現するか」ではなく、「映画の中にコミック的な表現をどう持ち込み、表現するか」にいかんなく技術が注ぎ込まれているからだ。
アメコミ読者なら見覚えのあるト書きや、ダイナミックなコマ割りがスクリーン上で見事に表現されている様を観て、僕は自ずと血中温度が上がってしまった。まぎれもない現実にいるのに、まるで未来のアメコミ映画をタイムスリップして観に来たような感覚だ。
もちろん背骨となるストーリーも素晴らしい。
「ヒーローは、マスクを被ることで誰にでもなれる」というスパイダーマンのメッセージ性を、作品世界を拡張してまで表現した「スパイダーバース」の世界観は人種的なマイノリティを含む世界中の人に愛されること間違い無いだろう。
ヒロインとして儚く命を散らしたグウェンがスパイダーウーマンとして活躍する世界、1000年以上先の未来で女子高生がスパイダーウーマンとなっている世界、白黒のノワール世界に生きるため色の判別ができないハードボイルド探偵がスパイダーマンをする世界…、これらは単なるギャグのレパートリーでなく、「スパイダーマン（ウーマン）の多様性」を表現するために必要なピースだ。
そして何よりも主人公としてピーターからバトンを受け取ったマイルス。
これまでの映画作品の中でも最も幼いスパイダーマンは、13歳のあどけない黒人だ。ちょっと音痴な鼻歌でヒップホップを歌うその姿、エリート主義のスクールに馴染めず尊敬する伯父に女の子の口説き方を教わる姿*3、夜な夜な寮を抜け出してはタギングを楽しむ姿……遠い海の向こうの国に生きる少年は、アニメーションの中なのにとてもリアルな存在として観客の心に残る。
彼を指導する我らがピーター・パーカーとのやりとりは擬似親子的で微笑ましい。「親は子に育てられる」とはよく言ったものだが、ピーターの成長に関しても楽しめる作品だ。
スパイダーマン作品初心者の方も十分に楽しめる物語だが、過去作の映画のパロディなども豊富なため、分かる人はニヤニヤしながら楽しめる。幅広い層に受ける作品の柔軟性もお見事だ。
ということでこんな文章読んでる暇があったら、今すぐIMAXの劇場で本作を観に行ってください！年一回しか劇場に行かない人でも、その一回を本作に当て込んでも構わないくらい面白いから!!
【補足】
あと付け加えておきたいのが、普段映画をあまり観ない（月1未満）の方は、字幕のテンポが非常に早い本作は日本語吹き替え版をオススメしたい。
日本アニメでも第1線で活躍する声優陣が、いわゆる日本アニメ的な「アニメ（萌え）ボイス」でなく、プロの吹き替え仕事をしてくれている。さらにはト書き部分も日本語字幕に書き換えられたりと非常に丁寧な仕事をしてくれているので、愛のあるローカライズをしてくれた日本スタッフの方にも感謝とリスペクトを送りたいです。*4
