海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

哀れなるものたち/Poor Things(2023年,ヨルゴス・ランティモス監督)

女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされた。

不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

プロデューサーも務めるストーンが純粋無垢で自由奔放な主人公ベラを熱演し、天才外科医ゴッドウィンをウィレム・デフォー、弁護士ダンカンをマーク・ラファロが演じる。「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」のトニー・マクナマラが脚本を担当。(https://eiga.com/movie/99481/より)

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武将を英雄視しない映画〜『ナポレオン(リドリー・スコット)』と『首(北野武)』

「時の武将」を英雄視しない映画

今年、多くのファンのいる映画監督の最新作が公開された。
一つはリドリー・スコット監督の『ナポレオン』で、もう一つは北野武監督の『首』だ。
2つの作品は扱う時代は違えど、作品の根底に共通しているものがある。それは「時の武将」を描きつつも、その武将をまったく英雄視せずに描いている点だ。

カリスマ性の欠落〜『ナポレオン』

ナポレオンといえば庶民の味方として革命を率いた英雄……というイメージが一般的であるが、ホアキン・フェニックス演じる彼を見ていても、ちっともそのような人物像は浮かび上がってこない。

妻であるジョゼフィーヌが浮気したと新聞に書き立てられれば戦場を放り投げて帰国し、妻をヒステリックに怒鳴りつける。愛のないセックスを要求したかと思えば、親戚もいる食事の場で自分たちに子供ができないことを妻のせいと決めつける*1

これらの行いが、ナポレオンが妻に依存する故の行為であることは劇中では度々示されるものの、やはり尊大な振る舞いにはゲンナリさせられる。

これは同監督の傑作である『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』同様にフェミニズム的な視点を取り入れていることは明白で、真の主役はジョゼフィーヌと言っても過言ではない。

そのような監督の作品の描き方・姿勢には賛同できるものの、やはり英雄でないナポレオンの半生をコッテリ2時間半のフィルムにされても、観客として楽しめる部分は正直あまりない。

映画の終わりにはナポレオンが率いた戦争で死んだ人間の数などが画面に表示される。
確かに、今現在地球でも戦争や虐殺が繰り広げられている状況を考えれば、ナポレオンをお気楽に英雄として崇めたくもなくなる。

映画的なカタルシスを徹底的に削ぎ落とし、ナポレオンという人物の愚かさにフォーカスすることが監督の狙いなら、この作品の退屈さにも頷けるものがある。

男色が破滅を生む戦国武将たち〜『首』

北野武監督の5年ぶりの映画作品がまさか時代劇になるのは個人的には意外だった。
だが蓋を開けてみると、「アウトレイジ」よろしく組織内で様々な男たちの思惑が蠢く様子は、確かにこれまでの北野映画にも通ずる、というかヤクザ映画の舞台を戦国時代に移したものと言ってもいい。

もちろん単にドンパチする俳優たちがチョンマゲ姿になったわけでなく、一層のホモソーシャル化や男色信仰を際立たせて、従来の作品とまた違う一面を感じられる。
史実がどうであったかはさておき、『首』の世界では男同士抱き抱かれの関係を持たないと政治的にのし上がっていけない。

特に信長においてはその思想の急先鋒といったところで、お気に入りの部下なのにアプローチをかけてこない明智光秀には愛憎入り混じるパワハラを繰り広げる。
特に今回のキーマンとなる荒木村重は信長とも光秀とも懇意にしており……と泥沼の様相が描かれていく。

一方、北野武演じる秀吉は百姓上がりのため「武士の嗜み」たる男色の気がなく、他の武将からのアプローチもない。
日本を代表する俳優がこぞって出演する中で、年が一つ抜けた武がそんな秀吉を演じると一層に説得力が増す。「あのおじいちゃんより、いけたおじさん同士仲良くやろうぜ」という空気が形成されているように感じられた。

後の歴史のあり方をなぞり、男色にとらわれた武将はみな死に、醜女好みの家康と「庶民感覚」の秀吉が生き残っていく様は痛快なれど、特段誰にも憧れも感情移入することもなく映画を観終える。

戦争は、「大量の個の殺人」

冒頭でも書いた通り、この2作では武将たちのヒロイックな部分は意図的に削ぎ落とされている。
監督の意図はそれぞれにあると思いつつも、2023年の現在にそうした姿勢で映画を撮ろうとしたことに、共通性を見出さずにはいられない。

どちらの作品も「戦争」を切り口に描いているが、人の生き死ににフォーカスすればそれは「大量の、個の殺人」にほかならない。
それらの指揮を行う人物は果たして英雄なのだろうか……その様な問いかけが聞こえた気がした。

*1:後のおぞましい実験で、確かに妻が不妊体質だったことはわかるものの、それでも酷い

ゴジラ-1.0(山崎貴監督,2023年)

日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズをはじめ「永遠の0」「寄生獣」など数々の話題作を生み出してきたヒットメーカーの山崎貴が監督・脚本・VFXを手がけた。

タイトルの「−1.0」の読みは「マイナスワン」。舞台は戦後の日本。戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。

主演を神木隆之介、ヒロイン役を浜辺美波が務め、2023年4~9月に放送されたNHK連続テレビ小説「らんまん」でも夫婦役を演じて話題を集めた2人が共演。戦争から生還するも両親を失った主人公の敷島浩一を神木、焼け野原の戦後日本をひとり強く生きるなかで敷島と出会う大石典子を浜辺が演じる。そのほか山田裕貴青木崇高吉岡秀隆安藤サクラ佐々木蔵之介と実力派豪華キャストが共演。(https://eiga.com/movie/98309/より)

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スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース/Spider-Man: Across the Spider-Verse(ホアキン・ドス・サントス ケンプ・パワーズ ジャスティン・K・トンプソン監督,2023年)

ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレスを主人公に新たなスパイダーマンの誕生を描き、アカデミー長編アニメーション賞を受賞した2018年製作のアニメーション映画「スパイダーマン スパイダーバース」の続編。

マルチバースを自由に移動できるようになった世界。マイルスは久々に姿を現したグウェンに導かれ、あるユニバースを訪れる。そこにはスパイダーマン2099ことミゲル・オハラやピーター・B・パーカーら、さまざまなユニバースから選ばれたスパイダーマンたちが集結していた。愛する人と世界を同時に救うことができないというスパイダーマンの哀しき運命を突きつけられるマイルスだったが、それでも両方を守り抜くことを誓う。しかし運命を変えようとする彼の前に無数のスパイダーマンが立ちはだかり、スパイダーマン同士の戦いが幕を開ける。

オリジナル英語版ではシャメイク・ムーアが主人公マイルス、ヘイリー・スタインフェルドがグウェン、オスカー・アイザックがミゲルの声を担当。(https://eiga.com/movie/96269/より)

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怪物(是枝裕和監督,2023年)

万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などで人気の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、「ラストエンペラー」で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞し、2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が手がけた。

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。

「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希角田晃広中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。

https://eiga.com/movie/98367/より)

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TAR(トッド・フィールド監督,2022年)

イン・ザ・ベッドルーム」「リトル・チルドレン」のトッド・フィールド監督が16年ぶりに手がけた長編作品で、ケイト・ブランシェットを主演に、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマ。

ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラー交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。

アビエイター」「ブルージャスミン」でアカデミー賞を2度受賞しているケイト・ブランシェットが主人公リディア・ターを熱演。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き自身2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、ブランシェットにとってはゴールデングローブ賞通算4度目の受賞となった第95回アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネート。(https://eiga.com/movie/97612/より)

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ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.3/Guardians of the Galaxy Vol. 3(2023年、ジェームズ・ガン監督)

クセが強くてワケありな銀河の落ちこぼれたちが結成したチーム「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の活躍を描く、マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)の人気シリーズ第3弾。

アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の恋人ガモーラを失ったショックから立ち直れないスター・ロードことピーター・クイルと、ガーディアンズの仲間たち。そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケットが命を失う危機にさらされる。固い絆で結ばれた大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、ロケット自身の知られざる過去にあった。

監督・脚本はシリーズを一貫して手がけてきたジェームズ・ガンクリス・プラットブラッドリー・クーパー、ビン・ディーゼルゾーイ・サルダナ、カレン・ギラン、デイブ・バウティスタ、ポム・クレメンティエフとおなじみのキャストも変わらず集結。(https://eiga.com/movie/95011/より)

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