海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

アス/Us

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 「ゲット・アウト」がアカデミー賞にノミネートされ、脚本賞を受賞するなど大きな話題を集めたジョーダン・ピール監督が、自分たちとそっくりの謎の存在と対峙する一家の恐怖を描いたサスペンススリラー。夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れたアデレードは、不気味な偶然に見舞われたことで過去のトラウマがフラッシュバックするようになってしまう。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。「ゲット・アウト」に続き、数々のホラー/スリラー作品を大ヒットさせてきたジェイソン・ブラムが製作。主演には「それでも夜は明ける」でアカデミー助演女優賞を受賞し、「ブラックパンサー」などで活躍するルピタ・ニョンゴを迎えた。(https://eiga.com/movie/90369/より)

9.5/10.0

個人的には、アカデミー脚本賞を獲得した『ゲット・アウト』以上に楽しんで(怖がって)観れた!

いわゆる「お化け屋敷」タイプのエンタメ的なホラーと、生理的嫌悪感を催す「厭な」ホラーが絶妙な塩梅でブレンドされた傑作。実は怖いものがあまり得意ではないのだけれど、近年傑作続きのホラー映画は映画全体の表現方法を確実に底上げしているので観ないわけにはいかない。

ジョーダン・ピール監督の作品はカメラワークが魅力的だ。
定点的なアングルで捉えるカットが多いのだけれど、シーン一つ一つが一種のアート作品のような趣を感じさせる。
加えてカメラ位置がかなり特殊なので、変なアングルそのものがこの作品にうごめく「得体の知れなさ」を表現している。そのため家族がビーチに行っているだけのシーンも不穏に感じてしまう。*1緻密な映画作りを堪能できるので、ヨーロッパ映画好きにも受けると思う。

というのも、本作は前半の展開はミヒャエル・ハネケの初期傑作『ファニーゲーム』を意識したような物語が展開される。バカンスで湖のほとりの別荘に訪れた裕福そうな一家が謎の人物に押入られ悲劇的な夜を迎えるストーリーはもちろん、父親が足を痛めつけられたりするディテールまで似せている。*2

ほかにも頻繁に出てくる旧約聖書エレミヤ書11章11節」というフレーズ、実在したムーブメント「ハンズ・アクロス・アメリカ」など、その全てを知らずとも小道具が不気味さを際立てていく。

説明不足なところも散見されるのだけれど、逆に全部わかっちゃうとホラーじゃないというか……。「わからない怖さ」としてそれらもしっかり機能していたと思う。

*1:投げたフリスビーがビーチに敷かれたレジャーシートのドットにスッポリハマる部分なんて、映画のあるオチを象徴的に表現していてニクいね!

*2:もちろん、監督の真意は計りかねるが