前々回、前回に引き続き、第3弾。残りの5作品をご紹介します。
#05:唾奇 x Sweet William「Jasmine」
Favorite Track : Good enough feat. kiki vivi lilly
5位は今年日本で一番女性ファンを獲得したであろう沖縄のラッパーと、名古屋を拠点に昨年あたりから頭角を現したトラックメイカーの共作アルバムを。
漏れ出る色気で男女問わず虜にする唾奇は、歌詞をよくよく聴いてみると「大麻」「(女への)借金」「下ネタ」が大部分を構成しているはずなのに、不思議と不快な感じはなく、スムースに聴き通せてしまう。それもSweet Williamの甘いトラックが大きな役割を果たしているのだろうが、繰り返しになっちゃうけど本人の色気あってこそだろうね。ナチュラルボーンヒモって感じが凄まじい。
以前ライブに足を運んだら、唾奇がステージに上がると他のラッパーの倍以上の黄色い声援と圧縮がかかって、「人気とは思っていたけど、これほどか」と驚いた。
SW製のビートでなくとも、軽やかかつドープなラップができることも今年の活躍で証明済みだし、持ち前のスター性と巧みなラップで、これからどんどんでかいフィールドに上がっていってもらいたい。
・唾奇 × Sweet William / Good Enough feat. kiki vivi lily
#04:tofubeats「FANTASY CLUB」
Favorite Track : LONELY NIGHTS (Feat. YOUNG JUJU)
4位は厳密にいうと純然たるラップ作品ではないかもしれないが、本作の持つ批評性や曲のテーマ、トラックの温度感を総合的に考えると、まぁヒップホップ作品という位置付けで問題ないのではと思う。
もはや歌ってない(メロディのない)ヒップホップアルバムなんてないくらいだし、そんな老害じみたカテゴライズの考えよりも、この作品の持つ強度にやられた訳です。
記事はこちらから。
・tofubeats - LONELY NIGHTS
#03:SALU「BIS3」
Favorite Track : Leaves
Free Download here
3位は今年縦横無尽に駆け回った(というか、毎年つくづくワーカホリックだな、と思う)、SALUのフリーミックステープを。
BIS=Before I Signed、つまり何らかの新しい契約を前に発表されるSALUのミックステープもこれで3作目。M-7を聞く限りだとこの度Def Jam(ユニバーサル)と契約するようなので、日本のヒップホップの看板アーティストとしてますます活躍が期待される。
本作は、そんな新しいステージへの意気込みと受け取れるかなり意欲的な作品で、様々なフロウの披露や歌ものラップの再定義(それはこの記事に詳しい)など今後のシーンの基準を作っていく気概が見て取れる。
これはわざわざ書く必要のないことかもしれないが、某WHITE何たらの薄っぺらいパクりとは次元が違うんだよ!
彼のデビュー当時、メディアの露出を嫌うBach Logicが顔出ししてまで「(SALUの登場で)シーンひっくり返るんで」と(ドヤ顔で)話していたが、その先見の明たるや。いよいよ預言が現実になりそうな予感がする。
・SALU - 県央厚木IC feat. だるま aka ₩ . ¥
open.spotify.com#02:PUNPEE「MODERN TIMES」
Favorite Track : Scenario (Film)
2位は、聞かなかったら迫害を受けそうなほど愛されたPUNPEEの待ちくたびれたファーストアルバムを。
リリースを引っ張りすぎてもはやすべてのリスナーのハードルが限界値で設定されていたはずだが、それを随分と余裕を持って超えてきた。この才能を持ちながら、この男が「一般人」のネットスラングをステージネームにしていることは、大いに意義ありだ。
凝った構成だけれども鑑賞ストレスもなく、持ち前のポップセンスを遺憾無く発揮したこの作品を聞いていると、今までの華麗な外仕事も、この作品を出すための準備運動だったのかと邪推してしまうほど。
聞けばわかるすごさを持っているので、わざわざ文章で説明する必要のない傑作だが(手抜きではないです)驚くべきことは、本作はプロモのためのビデオが一切出ていないこと。
本人が映画を偏愛しているゆえ、軽く2〜3本は作るのかと思いきやまるで「この作品そのものが一本の映画だろ?」と言わんばかりの姿勢に脱帽。事実本作を聞いていると、不思議と映像が浮かんでくるのだ。
・【PUNPEE DJ&LIVE】YouTube Music Night with PUNPEE
open.spotify.com#01:JJJ「HIKARI」
Favorite Track : DJANGO! (Prod by JJJ)
そして1位に選んだのは、ビートメイカーとしても引っ張りだこのJJJのセカンドアルバムを。
どこまでも徹底された本人の美学をブラさず、ビートもラップも着々と進化を遂げていく姿があまりにも美しく、パッチワーク的に張り巡らされた凶暴なビートにひたすら酔える40分間。聴き終えると音楽への価値観がガラッと変わると思います。
特に凄まじいのがフェイバリットにも挙げたM-8。JJJといえばギターサンプリングという印象がありますが、完全にネクストレベルにいったのがこの曲。複雑に入り組みまくったビートに、過不足なくタイトなラップを乗せていく職人技には唸らされます。
フラッシュバックスが揃ったM-12(現時点で最後の曲)も収録してくれるサービス精神しかり、この先も見たことのないエンターテイメントを見せてくれると信じています。
・JJJ - BABE ft. 鋼田テフロン (Prod by JJJ)
open.spotify.com以上で、今年の国内ヒップホップのベストの発表となります。今年は例年以上に傑作が多く輩出された濃い年だったと思います。
【2017年 日本のヒップホップ作品ベスト15】
#01:JJJ「HIKARI」
#02:PUNPEE「MODERN TIMES」
#03:SALU「BIS3」
#04:tofubeats「FANTASY CLUB」
#05:唾奇 x Sweet William「Jasmine」
#06:ゆるふわギャング「MARS ICE HOUSE」
#07:MONYPETZJNKMN「磊」
#08:Minchanbaby「たぶん絶対」
#09:Cherry Brown「Geminii」
#10:NERO IMAI「RETURN OF ACID KING」
#11:環ROY「なぎ」
#12:Jin Dogg「2nd High」
#13:SUSHIBOYS「NIGIRI」
#14: BAD HOP「Mobb Life」
#15:AWICH「8」
気が向いたらポップスや洋楽についても書きたいと思います。