海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

「あいのり Asian Journey」を見終えて

f:id:sunnybeach-boi-3210:20180323150605j:plain

ものすんげードススメ(←オススメの最上級)番組です。

①はじめに−−「偏見」はよくない

オタクの良くない習性として、「とある事象や物事に対して、理解しようともせずに拒否反応を見せる」というのがあると思う。*1
例えば人に対して「アスペ」のような差別的なカテゴライズを安易にしてしまうような。
ネットで特定のコミュニティにばかり居座ってしまうと、そういった感情はより助長されてしまうので、知りもせずに偏見を持つことのないよう、日々注意を払っている(当たり前のことなんだけど)。
僕が特に拒否反応を覚えていたのが、「恋愛バラエティー」的なテレビ番組だ。
チャラチャラした、きらきらした若者が恋に落ちる様を見せられては、社会にはびこる「恋愛至上主義」のようなものを振りかざされているようで、どうにも居心地が悪くなるのだ。
というわけで、今から記事に取り上げる「あいのり Asian Journey」も、はじめはツッコミ前提で見ていたことは正直に言いたい。
そもそも、スタジオのメンバーがあれこれありすぎたベッキーと、どう見ても恋愛上手とは思えないオードリー*2がメインMCを務めることのギャップが面白く感じ、興味本位でNetflixの配信を見ていた。
 
結論から言うと、どうしようもないくらい大好きな番組になりました。
「恋愛ものなんて虫唾が走る!」という人にこそ見てほしい番組。何を隠そう僕もそうだったので。以下、ポイントを絞って今回のあいのりの魅力を紹介したい。これから見る人のために、なるべく番組の核心には触れないよう書いていきます。

②恋愛要素が少ない

のっけから番組の存在意義を覆すポイントを持ってきてしまったが、本当なのだからしょうがない。
逆に言うと、人間ドラマの延長線上で愛が生まれていく「過程」の部分に多く時間を割いているのだ。
恋愛要素がなぜ少ないか、以下に小見出しで2点ほど挙げていく。
ⅰカップルがほとんど成立しない
今までのあいのりを全く見ていないので比較はできないが、カップル成立がかなりシビアだ。
スタジオのベッキーの言葉を借りれば「番組として成り立たない」ほどである。
あいのりのルール上、カップル不成立はすなわち告白が失敗することを指す。だからと言って、番組では思わせぶりな態度を取ったりして、人の心を弄ぶようなメンバーはいない。
全員が全員相手の気持ちに本気で向き合った末に、真摯に結論を出していく。
ゆえに振られた方も振った側も、さらには告白を見届けたメンバーたちも号泣する。
「気持ちはわかるけど、やりきれない」とでも言いたげに。
もちろん演出や編集のマジックが起こっていることは否定しないけれど、そんなこと日常で繰り広げられるクソみたいな駆け引きに比べれば、どうってことはない。
ⅱ「お国事情紹介」がかなり勉強になる
アジアの各国を回る中で、それぞれのお国事情を説明するコーナーが挿入される。これが、冗談抜きに勉強になるのだ。
たとえばミャンマーのパートでは、途上国ゆえ医療環境が十全でない状況が語られる。
その現状を知り、子供たちの治療を無償で行なっている日本人医師のもとを、メンバーは訪れる。
番組中では手術の手伝いをするなどして、子供たちと交流する場面に番組の尺が大きく割かれていた。
※リンク先はネタバレ注意。

mdpr.jpほかにも親日国であっても、政治的な関係性が微妙な台湾への恩返しのボランティアや、LGBTQに寛容なタイで多様な愛の在り方を学ぶなど、メンバーのみならず視聴者に対しても「価値観の転換」を試みている番組だと思う。

日本にいただけでは知り得ない価値観を共有していくことで、メンバーは「この先の日常で誰と歩みたいか」を真剣に考えていくのだ。
 
ということで、結果的には恋愛に収束していくのだが、その“過程”の方にかなり力を割いていて、総合的に見ると「恋愛要素」は薄く感じるのだ。

③「やらせ」は「やらせ」として見せる

非常に大胆であるが、とあるカップル成立の時、完全に番組スタッフが介入していたシーンがあった
いわゆる「やらせ」なのだが、これはスタッフが「メンバーが最も幸福になるためには」を熟考した末の結論であると感じた。それくらいスタッフとメンバーの絆は固いものだったことが伝わり、出しうる最適解のように思えた*3
そもそも、「やらせ」を番組として放送しているわけだから、逆説的に「やらせはない」とも言える!
こう書くと、一休さんのとんちみたいでアレですが、ネットが発達し色んなものがあっさりバレる現代社会においては、こういう誠実さがものづくりには必要なんじゃないかなと思う。

④メンバーのキャラが良い

なににつけてもこれに尽きる
個人がそれぞれの人生を歩んでいたら、決して交わることのない人物たちが、貧乏旅行をする様子は本当に見応えがある。
やはり今回のあいのりで最も魅力的なのは、28歳(奇しくも僕とタメ)のシャイボーイだ。自作ラジオをネットで配信している彼は、キャラクターがかなりユニークなのだが、回を重ねるごとに「素」が見えてくる。
いつかの回で酒が回り「恋愛をしていないと(恋人がいないと?)バカにされるのはなんでなんでしょうか?」と漏らすシーンがある。
まさに恋愛弱者の持つルサンチマンを代弁してくれているのだが、その彼が誰かを想うことの尊さを得ていく過程が素晴らしい。
ほかにも番組中では「恋愛できないロボ」と揶揄される裕ちゃんの心理も、非モテ野郎は全員が共感できると思う。長い間恋人がいなかった彼は、「自分が恋模様のド真ん中にいること」にすら気付けない状態が長く続く。スタジオでもいじりの対象だったが、これを僕は笑えなかった。
そして旅のラストに合流してきたチャラ男、「社長」も素晴らしかった。六本木を擬人化したような豪快で派手な見た目の彼が、終盤では年相応(27歳)の不器用さが見え隠れする。登場の瞬間「俺とは一生相容れないタイプの人間だ」と思ってしまったけど、ラストではそんな彼を本気で応援していた。
社長に関してはスタジオの若林のコメントがとても素晴らしいので、ぜひ本編で確認していただきたい。

⑤MC陣が良い

そんなメンバーを見守る、スタジオの雰囲気もかなりいい。
一連の騒動後に起用されたベッキーのある種の開き直りも清々しいし、やはり話運びがうまい。もっと仕事を増やしてあげて欲しい。
オードリー若林のブラックだけど決して人を傷つけないジョークの温度感も素晴らしい。自由気ままにトークしているように見えて、実際はそれぞれが批評性の高いコメントを連発している。そしておそらく彼らよりも「若い目線(=ラブワゴンメンバーと同世代)」での意見を求められている河北麻友子大倉士門も、適材適所といえる布陣だ。
 
…そんな魅力的な番組も、昨日22日(木)の配信を以って一旦終了。

news.livedoor.com新シーズンの配信は秋とのことで、あいのりのない夏を過ごすことが決定してしまった。しばらくはテラスハウス一本の生活が続きます。

*1:文章書き終えて思いましたが、何も「オタク」に限った話ではないかもしれませんね。

*2:年明けの報道で大逆転ですけどね

*3:こればっかりは見てもらって各々で判断してもらうしかないけど