海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.3/Guardians of the Galaxy Vol. 3(2023年、ジェームズ・ガン監督)

クセが強くてワケありな銀河の落ちこぼれたちが結成したチーム「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の活躍を描く、マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)の人気シリーズ第3弾。

アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の恋人ガモーラを失ったショックから立ち直れないスター・ロードことピーター・クイルと、ガーディアンズの仲間たち。そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケットが命を失う危機にさらされる。固い絆で結ばれた大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、ロケット自身の知られざる過去にあった。

監督・脚本はシリーズを一貫して手がけてきたジェームズ・ガンクリス・プラットブラッドリー・クーパー、ビン・ディーゼルゾーイ・サルダナ、カレン・ギラン、デイブ・バウティスタ、ポム・クレメンティエフとおなじみのキャストも変わらず集結。(https://eiga.com/movie/95011/より)

9.5/10.0

正直ここ数年のMCUは、ファンから見ても凡作続きの印象が拭えなかった。劇場作品も前のようなワクワク感が無いし、ドラマ作品は「本来2時間でやる話を6時間に引き伸ばして6分割しただけ」という印象の作品ばかりで、フェーズ4はかなり苦痛に感じていたのも事実。
しかしジェームズ・ガンがマーベルを離れる前に送り出した本作は、完全にMCUがカムバックしたと感じさせる傑作だった。

ちなみに僕は苦手な(好みでない)有名映画監督が2名いて、それはクリストファー・ノーランジェームズ・ガンだ。
映画好きからの評価はかなり高い2人なのだが、前者は脚本や物語の設定が地味に雑なところがファンの評価と乖離していると感じて、後者は時折見せる露悪的な表現に嫌悪感を抱いてしまう。
しかし全年齢対象の『GoG』シリーズは、幾分かそういった成分が緩和されるので結構好みである。音楽も楽しく聴けるものが並んでいて心地いい。

まず本作はテンポの良さに尽きる。近年のMCU同様長尺で上映時間は150分あったが、それを感じさせないほどテンポよく物語が進むので、ダレることなく観ていられる。
それもそのはずで、本作はガーディアンズの1人(1匹)であるアライグマ、ロケットが瀕死の重傷を負うところからスタートする。

ロケットを救うためには、ロケットを生み出した今回の敵、「ハイ・エボリューショナリーの基地」に潜入せねば! ということで早速敵地に向かっていく。ここまでの導入が非常にスマートに感じた。

映画内でたびたび挿入されるロケットのオリジン(誕生に至る過去話)も非常に興味深く見れる。彼がなぜやさぐれた、どこか影のある人格になってしまったのかを時間をかけてたっぷり描いていく。本作の本当の主人公はロケットなのだなと感じさせる作りだ。

【以下、若干後半の展開に触れています】

シリーズとしての面白さがある一方で、一本の映画として観ると気になる点がちらほらあるのも事実。特に、舞台を「カウンターアース」なる惑星に移してからの中盤の展開が顕著だ。

「カウンターアース」は、今回の敵である「ハイ・エヴォリューショナリー」が作った惑星だ。この惑星は、「人間には欠点がありすぎる=動物をベースに穏やかな人格の生き物が生活する理想の惑星を作ろう」という背景で出来上がった人工惑星になる。ここで暮らす生き物は動物を強制的に人型へ進化させ、人間のような生活を送っている。

この星に降り立った時、予告編でも使われていたが、ドラッグスが子供に対してボールをぶつけるギャグ(?)がある。*1子供に対してやって良い行動ではない。

実はこのシーンは物語終盤の伏線にもなっているのだけど、ジェームズ・ガンの露悪的なユーモアが悪い方に振れたと感じ、非常に嫌な気分になった。

また、このカウンターアースはガーディアンズがやってきたがために、ハイ・エヴォリューショナリーによって爆破されてしまう。
当然惑星で暮らす住人たちは全員死んでしまうわけなのだが、そこに対してなんのフォローもないのはどうなのだろうと感じてしまった。

この辺り、「仲間の大切さ」が大きなテーマである一方で「それ以外のものに価値なし」ともなりかねないので、結構危ういバランスの作品になっているなと感じてしまった。

ただ、そういう気になる部分を差し置いても、MCUとしてのカムバックを感じられる快作であったことは確か。

*1:ピーターの「俺たちは敵じゃない」という振りがあってのボケ、とは理解しつつも……