海辺にただようエトセトラ

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(庵野秀明総監督,2009年)

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社会現象を巻き起こしたTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を新たに描き直す劇場版4部作の第2部。汎用ヒト型決戦兵器エヴァンゲリオンに乗り、自ら戦うことを選んだ14歳の少年、碇シンジ。そんな彼のもとに、新たにエヴァ2号機とそのパイロット、式波・アスカ・ラングレーらが加わり、謎の敵“使徒”との戦いは激化していく……。TV版に登場しなかった新キャラ、真希波・マリ・イラストリアスや新メカのエヴァンゲリオン仮設5号機なども登場。(https://eiga.com/movie/53380/より)

9.5/10.0

多くの人同様、「前作の延長だろうなぁ」くらいの気分で観に行った公開当時、そのこちらの安易な予測を見事に裏切った本作の興奮は、今でも瞬時に思い出せる。
大学生だった当時はバイトの仲間と「ポカポカってやばくね?」とか「シンジさんモードで仕事頑張ります」的なしょうもないことを仕事そっちのけで(すみません)話していた。
エヴァンゲリオン といえば「暗い」「わかりづらい」「とっつきにくい」というイメージを多くの人が持っていて、それはファンも同様だろうが、そういった「刷り込まれてきた印象」がより一層本作の「陽」なオーラを引き立てたのだと思う。

冒頭から全く従来のエヴァとは異なる。なんと加治リョウジ在籍当時のネルフ・ユーロ支部を舞台に、謎のチルドレンであり完全新キャラの「真希波・マリ・イラストリアス」がエヴァ5号機を駆り使徒を殲滅する。
相変わらず意味深に各キャラがそれぞれの思惑をぼやく様は「エヴァそのもの」なのだが、完全新規と言えるシーンにのっけから興奮メーターがブッチぎられた。

以降の本編の展開は、旧アニメ版での「男の戦い」までをまとめたもの……と言えるが、話の展開やキャラクターの歩み寄り方が段違いにリビルドされており、度肝を抜かれた。
その中でも大きな変化といえば「ヒロインたちの立ち位置」であろうか。身もふたもなく言ってしまうと「ラブコメ的展開」となって、シンジに対してレイとアスカが歩み寄っている様子が印象的だ。
その歩みよりのきっかけがシンジの振る舞った「お弁当」であることも感動的で、「内気なシンジが周りとの関係構築に積極的になっている!」と衝撃を受けたものだ。*1
そんなある種下世話な展開も織り込み「物語の推進/誘引力」を高めたからこそ、後半に訪れる悲劇には胸をかき乱される。
童謡をバックに暴力的な悲劇を観客に見せる展開は、見返すと本当に悪趣味だなと苦笑してしまうが、これものちのカタルシスへの「仕掛け」だとわかると非常にニクい演出だ。

そして何よりも、クライマックスである「男の戦い」をベースとした覚醒シンジの活躍が本作の見どころだ。
作中最強使徒ともいわれている「ゼルエル*2」を使徒とし、新キャラのマリもレイも歯が立たない状態となってしまう。そこに先の悲劇を受けてパイロットを降りたシンジが復活する一連のシーンは目頭が熱くなる。
シンジが戦場に戻っただけでも「胸熱」なのに、そこから覚醒したシンジによる怒涛の展開は観るもののアドレナリンを全開にする。
救えなかったアスカの分も連れ戻すかのようにレイを使徒から引き上げるシーンの感動たるや……。

「こんな劇場版を観られるとは!」と誰もが喝采をあげたのではないだろうか。

一方で続く「Q」のとんでもない展開を、一体予想できた人がどれほどいたのかのだろうか……。それについては次回へ続く。

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*1:小さな変化でいえば「アスカのビンタをレイが『私は人形じゃない』と拒否するところや、「体重が増加した(=ゲンドウと関係を持ってない?)リツコなどだろうか」

*2:新劇場版は使徒の名前はなし