海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

2020年 ベスト映画10/後篇

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前回からの続きでございます。

#05-はちどり/House of Hummingbird(キム・ボラ監督,2018)

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主題はフェミニズムであるのだけれど、周りの男どもをステレオタイプに描かず、人間として厚みを持たせる監督の温かい眼差しに感激しました。

それでも女性が女性であるというだけで受ける弊害はあまりにも大きくて滅入ってしまうのですが。

#04-詩人の恋/시인의 사랑(キム・ヤンヒ監督,2017年)

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公開年を観ると、なんと韓国ではパラサイト以前にこんな傑作ヒューマンドラマが生まれていたことがわかります。

日本でもようやくメジャーな映画でLGBTを真摯に語ろうとする向きも見られるけど、本作を観るとまだまだ遅れている印象です。

#03-行き止まりの世界に生まれて/Minding the Gap(ビン・リュー監督,2018年)

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記事を見返すと、この映画の辛いところばかりを書いてしまっているのだけれど、彼らにスクリーンで再会したいと強く思ってしまいます。

紛れもない「今」を切り取ったドキュメンタリー。

#02-精神0(2020年,想田和弘監督)

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奇しくもドキュメンタリー続きですが、こちらは「日本の今」を切り取っていると言えるかもしれません。

 

#01-ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー/Booksmart(2019年,オリビア・ワイルド監督)

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そして今年トップに選んだのは、女優として活躍するオリビア・ワイルドの監督デビュー作。当時のブログでも高得点を出したのですが、自分の中で「今年の一本!」となるまで育っていったのは少し意外でした。しかし鑑賞リストを見返していくと「やっぱりこれかな」とさせる力があった作品です。

ジャンルとしては「青春コメディもの」だけど、確実そのジャンルを1段階(いや、2-3段階か?)上に引き揚げたと言っていい傑作
詳細は記事に書いていますので、よろしければご覧ください。

本作はすでにNetflixに上がってますが、イギリスの傑作青春コメディ『セックス・エデュケーション』と併せてお楽しみください!

その他、2020年の映画を振り返って

ビッグ・バジェット作品がことごとく見送られた1年

2020年の映画界を振り返ると、「公開されなかった作品」に思いを馳せてしまうのが正直なところです。

ぶっちゃけ予告で大体の展開は予想できてしまうけど、今年最も観たかったといっても過言でない『ブラック・ウィドウ』、ついに劇場上映を取りやめてしまった『ソウルフル・ワールド』*1、オスカー俳優が殴り込みをかけた『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』、あとは爆笑必至であろうドウェイン・ジョンソン主演の『ジャングルクルーズ』……、正直好みでない作品もあるけれど、やはり大きな予算を割いて作られた映画は、大きなスクリーンで観るととても楽しい。そういう楽しみが奪われてしまったことがとても残念です。(どの作品も相当数予告を劇場で鑑賞済みだったので尚更)

皆さんご存知の通り新型コロナウイルスの猛威はいまだに収まっていなく、これらの作品が今後どうなるのかは分からなく、いまだに不安な気持ちで成り行きを見守っています。

女性監督の台頭

今年を振り返ると女性監督による傑作映画がとても出てきた印象です(これまで女性が活躍できる土壌が映画界になかったのかもしれませんが)。

選外になってしまったものでも、暴力の本質を真摯に捉えた『ナイチンゲール』のジェニファー・ケント監督、今後世界で活躍していくであろう『37セカンズ』のHIKARI監督、傑作映画を撮り続けついに『若草物語』を大胆に解釈したグレタ・ガーウィグ監督、絵画のような画作りに徹底してこだわり観客を終始惚れ惚れさせた『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督……ぱっと思いつくだけで、これだけ心に残る作品が女性の手によって作られています。実はどれも本国での公開年はバラバラなので偶然日本に揃ったのでしょうが、配給側も「そういう空気」を感じ取っていたのかもしれませんね。

邦画界での「ドラマ化→映画化」の逆転現象

いわゆる『●● THE MOVIE』は死ぬほど作られている邦画界ですが、そうではなく「ドラマだったものを映画に再編集」していく手法で、『本気のしるし 劇場版』『スパイの妻 劇場版』という傑作が出てきました。

こういう手法の方が予算を取りやすいのか、あるいは企画が通りやすいのかはわかりませんが、良い作品が多く観られるのであれば観客としては大歓迎です。どちらも人間ドラマや役者の演技に比重を置いた作品で、とても見応えがありました。

Netflix映画がめちゃくちゃ面白い

少し前まではNetflixオリジナルの映画って、「時間潰しに観るにはアリかな」的な小粒の作品が多かった印象なのですが、明らかにスコセッシの『アイリッシュマン』以降から潮流が変わりました。

特に今年は、映画館の営業自粛中には多くの作品を楽しみました。
ベストに挙げた『もう終わりにしよう』を筆頭に、『ザ・ファイブ・ブラッズ』『アンカット・ダイヤモンド』(←邦題はひどい)『ハーフ・オブ・イット』『タイラー・レイク』『悪魔はいつもそこに』『シカゴ7裁判』『ヒルビリー・エレジー』……他にもテイラー・スウィフトBLACKPINKミシェル・オバマといった女性のドキュメンタリーも見応えがありました。

もちろんドラマもたらふく観ているのですが、それまで書いていくと収集がつかないので割愛します。(気が向いたら別の記事で書いていきます)

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さて、つらつらと書いてしまい、長い振り返り記事になってしまいました。
今年もマイペースに……と言うと途端にスローダウンしそうなので、極力ハイペースな更新を心がけたいです。
いつも見に来たり、スターをくださる方、ありがとうございます。励みになっています。

それでは本年もよろしくお願いします。
状況が状況だけに暗い気持ちが続くかもしれませんが、皆さんにとって素敵な1年になりますように。

*1:評判がすこぶる高いだけあって余計悔しい!