海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

M-1グランプリ2020 決勝戦感想

f:id:sunnybeach-boi-3210:20201223172945j:plain

普段全くテレビを見ないのだが、『半沢直樹』以来のリアタイ視聴。

多すぎるCMにはうんざりさせられたけどとても楽しめた。そこまでお笑いに詳しくないけど各組の感想を備忘録的に書いていきたい。

番組終了後には公式YouTubeから漫才の動画がアップされたのも素晴らしい。

各コンビの漫才動画も一緒に貼るので、まだ見ていない方はもちろん、見直す方も併せてどうぞ。

1回戦

インディアンス 625点

www.youtube.com敗者復活枠だが、あまりハマらなかった。
「細かい言い間違いの揚げ足をとる」「勝手に話を進めてしまう」などの細かいボケが多過ぎて忙しなく、その一つ一つに笑いがついていかなかった。

敗者復活かつ、一番手というのはかなり不利な状況なんだろうけど、上記に加えて「(急いで会場に来たから)まだ息が上がってるね」というメタネタまで加えるともう大渋滞という感じ。

東京ホテイソン 617点

www.youtube.comネタがとても面白かったので、一番点数の低さにギャップを感じたコンビ。
巨人師匠のコメントはいつも的確だと思うけど、このネタは客が正解を確認できなくても成立すると思う。だからもっと破天荒な言葉遊びを練ってリベンジして欲しい。

ニューヨーク 642点

www.youtube.com「炎上も辞さないスタイル」というのが彼らへの印象だけど、この決勝の漫才ネタは彼らなりにしっかりと一般向けにチューンナップされていたと感じた。ゆえに本気で「勝ちに来ている」感が伝わる良い漫才だった。
「細かい軽犯罪に突っ込む」という構成で、ニューヨークのよくある誰かをあげつらうネタでなかったのも好印象。最終戦に残っても良かったのではと思う。

ただ、この決勝戦直前にオンラインサロンを始めたのはダサすぎると思う。

見取り図 648点

www.youtube.com可もなく不可もなくといった感じ。「無意識にやってしまいました」という言葉が伏線にように感じるけど、これはオチありきで考えられているせいで序盤の朝礼が意味不明になっている。
というか、朝礼で復唱を行う企業なんて店舗以外存在しないと思うので、リアリティに欠ける。

最終決戦に残った彼らが一番「漫才らしい」みたいな声があるけど、このネタはむしろ丸っとコントじゃないか?
自民党のポスター撮りに行くくだりは、政権に擦り寄ってる松本人志への当て擦りなら面白いのだけど、そこまで突き抜けてなかった。

おいでやすこが 658点

www.youtube.comダークホース。個と個の高いスキルが織りなす職人芸に惚れ惚れする。
歌ネタが巡り巡って「そもそもカラオケでオフコースを歌っても盛り上がるか!」という伏線の効いた突っ込みに爆笑した。

マヂカルラブリー 649点

www.youtube.com恐ろしい酷評で終えた2017年からのカムバック。全くスタイルを変えずに自分たちの漫才をぶちかましていてとても素晴らしかった。

野田クリスタルの挙動がいちいち面白いけど、村上のテンポの良い実況兼突っ込みこそ、このコンビの真骨頂な気もする。

オズワルド 642点

www.youtube.com去年に引き続き全く自分には刺さらない漫才だった。「ザコ寿司」という造語で笑わせようとするスタンスが好きになれない。

おとなしいテンションで進めるスタイルが周りの騒がしい漫才にかき消されたのは気の毒だけど、意外に伊藤の声はうるさいのでたたずまいが地味すぎるのかな、という印象。

アキナ 622点

www.youtube.com大本命みたいな流れがあったのでこちらの期待が大き過ぎたのか、少し拍子抜け。
本人たちがとてもリラックスしてやっていて、それが「ほら、ここ面白いでしょ?」的な感じに見えるのだが、どのネタもそこまで面白く感じなかった。

ボケの人のセットアップのサイズ感がおしゃれだし、二人とも雰囲気に華があるので固定ファンは多いのかな。

錦鯉 643点

www.youtube.comアラフィフのおじさんが「ちびっ子まで笑わせてやる!」という気概で挑んでる姿勢が美しい。このネタは、若い人がやっても面白くないことを分かっていて臨んでいるところには、ネタの方向性とは逆にスマートさも伺える。

ただ、万人受けを狙うなら、パチンコネタ(たぶん本人たちが好きなんだろうけど)にしない方がいいかもしれない。

あとツッコミの声がマイクにうまく乗ってないのも気になった。

ウエストランド 622点

www.youtube.comルサンチマンをぶちまけるスタイルはいいけれど、それを戯画化=笑いにまで消化し切れてない。だから会場もどんどん冷えていったのだと思う。山里亮太の自伝の「笑えない部分」を読んでいる気分にさせられた

そして「お笑いは何もいいことがなかったやつの復讐劇」という言葉、これがもしも本心だとするなら一体誰に対する復讐なのだろうか。

あと「だれも傷つけない漫才」は「芸人に品行方正を求めている」わけではないと思うので、論点がズレてる。悪口漫才師名乗るならもっとロジカルな組み立てが必要。

最終決戦

見取り図 3位

www.youtube.com全然ダメだった
入りで「地元を大切にしよう」と言ってるのに、相方の岡山をど田舎と腐すくだりは、ネタでも不快

「大阪に住ましてもらってんのに、大阪の文句言うなら/嫌なら出てけ」という突っ込みも排外主義的で、大阪の人は人情味あるんならその言い方は無いでしょ? とはてなマークが浮かぶ。

そんな感じで突っ込みのワードセンスの端々に差別的、排外的な雰囲気が滲み出てて笑えない。ただ、「見取り図が明石で待ち合わせしてるだけ」という突っ込みは面白かった。

マヂカルラブリー 1位

www.youtube.com終戦の3組は票が割れるなぁと思いつつも、一番笑ったネタ。
「高級フレンチに行くことになったけど作法がわからない」「電車の吊り革に頼りたく無い」などと一見共感を呼びそうな導入なのに、以降の展開が破天荒過ぎて笑ってしまう。

先の「フレンチ」が後半になると勢いが弱くなるのに対して、こちらは勢いを殺さずオチも面白い。
一見野田がめちゃくちゃに暴れまわっているだけだが、繰り返し見るとその緻密さに圧巻させられる。村上のベストなタイミングで繰り出す、ベストなワードセンスによる突っ込みが面白い
「お金は大事だから拾えよ!」といった小ボケも笑わせてもらった。

おいでやすこが 2位

www.youtube.com素晴らしい。
歌そのものも、実際ありそうなメロディで頭にこびりつく。
ミュージカル好きな人なら、こがけんの周りにダンサー役が幻視できたのでは無いだろうか。

先にやったマヂラブの村上が間髪入れずに突っ込むのと対照的に、間を生かしたおいでやす小田のツッコミもいちいち的確で面白い。前のネタを引っ張ってオトしたのも美しい締め方だった。

総評

2019年の面白さが異常だったと思うが、今回も楽しめた。
どんどん「笑いのスタイル」が細分化されていき、面白い試みは出尽くしているように感じるのに、それをさらにアップデート/創意工夫をこなしていこうという意思を感じられたコンビが魅力的に見えた。

ほか、気づいたこととかあれば追記します。M-1は予選の動画も上がっているので他のコンビも見ているのだけど、面白くて日の当たっていない人はめちゃくちゃいるんだなぁとひしひし感じる。