海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

ミスター・ガラス/Glass

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M・ナイト・シャマラン監督がブルース・ウィリスサミュエル・L・ジャクソン共演で送り出した「アンブレイカブル」のその後を描いたサスペンススリラー。同じくシャマラン監督作でジェームズ・マカボイ主演の「スプリット」とも世界観を共有する。フィラデルフィアのとある施設に、それぞれ特殊な能力を持つ3人の男が集められる。不死身の肉体と悪を感知する力を持つデヴィッド、24人もの人格を持つ多重人格者ケヴィン、驚くべきIQの高さと生涯で94回も骨折した壊れやすい肉体を持つミスター・ガラス。彼らの共通点は、自分が人間を超える存在だと信じていること。精神科医ステイプルは、すべて彼らの妄想であることを証明するべく、禁断の研究に手を染めるが……。「アンブレイカブル」でデヴィッドを演じたウィリス、ミスター・ガラスを演じたジャクソン、「スプリット」でケヴィンを演じたマカボイが同役を続投。(https://eiga.com/movie/90226/より)

7.2/10.0

ものすごい乱暴に言ってしまうと、出落ち感半端ない作品

2年前に上映された監禁系スリラー『スプリット』の終盤で、劇場に生まれた興奮は凄まじかった。なんせ単発のホラー映画と見せかけて、実は17年前に作られた『アンブレイカブル』シリーズの続編だった!という強力なサプライズが待っていたからだ。

つまりアンブレイカブル』を観ていない人は一切置いてきぼりにする*1という、荒技としか言えないシャマランの傍若無人ぷりが凄まじく、その人を食った作品展開にシャマラニストは歓喜したのだ。

そして、この一連の驚きは「一見単発ものの映画同士が、実は連作ものだった」ということに尽きるので、両作が合流する本作には、それを超える驚きが(あまり)ない。
トリックスターのシャマランが、ファン向けに物語の結末を送る一本と言えるだろう。

もう一つの側面が、メタ的な視点だ。「本当に超人的な能力を持っている人は、ヒーローとして讃えられるのか?」テーマも盛り込まれているが、『アンブレイカブル』が上映された2000年ならまだしも、すでにそういうテーマは多くのヒーロー作品でやり尽くされているので、正直手垢がついている印象が否めない。

そして個人的な思いとして、「メタ視点を入れるのあれば、本来のジャンルの映画としても面白くするべき*2」という基準があるのだが、この映画は非常に脚本が退屈。

予算の関係かもしれないが、シーンの大半は安っぽい精神病院の病室でのやりとりばかりだし、ラストの戦いのロケーションも拍子抜けだ。*3

それと細部の甘さが目立つ。『スプリット』ではカニエ・ウェストを愛聴していたケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)が、本作ではドレイクを好んで聴いている。以前より続く両者の険悪ぷりを考慮すると、その乗り換えはさすがにないんじゃないの?と思ってしまう。
物語としての意外性は今作にも盛り込まれているが、この部分がかなり尻すぼみだったのも残念。

正直映画そのものはあまり楽しめなかったのだが、やはり今後もX-MENシリーズを牽引していくであろうジェームズ・マカヴォイの百面相は見もの。
縁起の幅を広げてくれたシャマランには感謝し、次のX-MENシリーズを待ちたいと思います!!

*1:未見の人は、マジで終盤の展開は意味不明だと思う。

*2:作品の中で「ヒーローとは?」を問いかけるだけでは、ただの評論。なので、純粋に作品としても面白くあるべき。

*3:それこそが本作のメタ的な“ズラし”なんだよ!」という指摘があるかもしれないけれど、それにしてもあの場で戦われて盛り上がるか?