スパイダーマンの宿敵として知られるマーベルコミックの人気キャラクター「ヴェノム」を、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ダンケルク」のトム・ハーディ主演で映画化。サム・ライミ監督作「スパイダーマン3」にも敵として登場したヴェノムを、「ゾンビランド」「L.A. ギャング ストーリー」のルーベン・フライシャー監督のメガホンで、新たなダークヒーローとして描く。「誰もが望む、歴史的偉業」を発見したというライフ財団が、ひそかに人体実験を行い、死者を出しているという噂をかぎつけたジャーナリストのエディ・ブロック。正義感に突き動かされ取材を進めるエディだったが、その過程で人体実験の被験者と接触し、そこで意思をもった地球外生命体「シンビオート」に寄生されてしまう。エディはシンビオートが語りかける声が聞こえるようになり、次第に体にも恐るべき変化が現れはじめる。(https://eiga.com/movie/88636/より)
7.2/10.0
スパイダーマンのヴィランの中でも抜群のセンスで構築されたビジュアル*1のヴェノムが、単独作品で映画化するというオタクホイホイムービーな本作。
「最悪」なんていうインパクト大な広告展開もあり、かなりダークな路線を期待していたのだが、『X-MEN』シリーズにおける『デッドプール』的な、コミカルなアンチヒーロームービーという印象を受けた(というか、デップーよりもだいぶマイルドなんだけど)。
おそらくハリウッドで最も存在感のない地味俳優の一人、トム・ハーディー演じるエディ・ブロックが、あのミッシェル・ウィリアムズと婚約しているという素直に受け入れきれない設定の導入部分が象徴するかのように、少し中途半端な作品に思えてしまった。
まず序盤でエディがヴェノムになる、いわゆる「オリジン」部分が非常に長く感じた。
『スパイダーマン:ホームカミング』では、ピーターと親友のネッドの会話で、スパイダーマン誕生について触れる。それも
ネッド「(ピーターを噛んだ)蜘蛛は?」
ピーター「死んだ」
というやりとりのみだった。このように鮮やかにオリジンを省略したシリーズのスピンオフ作品とは思えない冗長さがあった。*2
この辺を圧縮させて後半のアクションのボリュームを拡充すればより満足度は高くなったかな? と思う。
あと、本来はエディはスパイダーマンに記事の捏造を暴かれて職を追われる→失意の最中にシンビオートが寄生しヴェノム誕生、なはずだが、本作だと普通に社会的正義に駆られた末に職を追われる設定なので、結構正当な主人公なのだ。
そのため、スパイダーマンと対決する未来が見えづらい。共闘するのも魅力的だが、序盤は敵対してもらいたいなぁと感じた。
とはいえ、エディの独善的な部分は物語の端々で確認できるので、ヴィランとまではいかずともアンチヒーロー的な立ち位置での活躍を期待していきたい。
少し不満な点を挙げすぎてしまったが、逆に他の部分では楽しませてもらった。
トム・ハーディーの見た目は地味だけども、演技力は確か。少しとぼけた感じのヴェノムとのどつき漫才的なやり取りは面白いし、あくまでユーモアを忘れないMARVEL作品の系譜からぶれることなくエンタメしている。
しかし本作の一番の収穫はヴィランであるライオット/ドレイク役を演じたリズ・アーメッドだろう。端正な顔立ちに宿る知的な雰囲気で悪役を演じていたが、はっきり言ってトム・ハーディより良い男なので他の映画で主演などしてくれないかと期待。SF映画映えするルックスだなぁと見惚れていた*3。
個人的には10点満点クラスを期待していたので、想像とのギャップで7点ほどかなぁという感じ。とはいえ、作品としてはとても面白いので、クソ長いエンドロール*4を耐え切れるという方は是非観に行ってもらいたい一本。
追記
トレーラー映像からトム・ハーディーの顔をキャプチャして、改めて見たけど、恐ろしいくらい華がない!
スパイディを好演したトム・ホランドの引き立て役のような気がしてしまい、少し気の毒。(演技は好きだよ!)