海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

春日太一『あかんやつら』

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時代劇・映画史研究家の春日太一が7年の取材と3年の執筆期間をかけて書き上げた大作ノンフィクション。単行本は2013年11月、文庫本は2016年6月発刊。

『天才 勝新太郎』の衝撃から3年。春日太一が10年の歳月をかけて取材し、執筆に3年超をかけた疾風怒涛のノンフィクション。(Amazonより)

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8.2/10.0

「まるで映画のような…」なんて陳腐なたとえを用いだしてしまうほどドラマティックな歴史を、破天荒な人間が作り上げてきたことが非常に丁寧に整理された一冊。

映画史を彩った(暴力)映画の数々の撮影秘話が次々と描かれていくのだが、今の娯楽企業でやったらたちまち会社ごと潰されるようなものばかりだ。

ただ、撮影所で映画を作っている職人たちは自分の作るものに誇りを持って、10日間徹夜をしたり、栄養剤と称してヒロポン打ったり(※当時は合法)しながら映画を作っていた。

そこに対して「ブラック企業だ」だという批判は単なる野暮だ。

創設メンバーの一人が言う「東映京都はお客さんを喜ばせてなんぼだ」「暇があるなら映画館言って客の様子を見てこい」というセリフや信念を、昨今の映画業界に携わる人がどれほど持っているのか? どちらが誠実に映画作りをしているかは一目瞭然だ。

ただ、僕個人としてはここまで劣悪な環境で働くのは本当に勘弁です。