海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

ハスラーズ/Hustlers

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リーマンショック後のニューヨークを舞台に、ストリップクラブで働く女性たちがウォール街の裕福なサラリーマンたちから大金を奪う計画を立てたという実話を、ジェニファー・ロペスと「クレイジー・リッチ!」のコンスタンス・ウーのダブル主演で映画化。年老いた祖母を養うためストリップクラブで働き始めたデスティニーは、そこでひときわ輝くストリッパーのラモーナと出会う。ストリッパーとしての稼ぎ方を学び、ようやく安定した生活が送れるようになってきたデスティニーだったが、2008年に起こったリーマンショックによって経済は冷え込み、不況の波はストリップクラブで働く彼女たちにも押し寄せる。いくら働いても自分たちの生活は向上しない一方、経済危機を起こした張本人であるウォール街のエリートたちの裕福な暮らしは変わらず、その現実に不満を募らせたラモーナが、デスティニーやクラブの仲間を誘い、ウォール街の裕福なクライアントから大金をだましとる計画を企てる。(https://eiga.com/movie/91824/より)

9.7/10.0

かっけえ。
その一言に尽きる。金に金を稼がさせるような、悪どいウォール街の男たちからは消え失せてしまった「仁義」を背負って、違法ビジネスでのし上がるダンサーたちの栄枯盛衰が描かれる。
スコセッシが『アイリッシュマン』にてギャング映画に終止符を打ったのであれば、本作は新たなギャング映画を生み出したのではないだろうか(しかも、語り口はこちらの方がスムーズかつ鮮やか)。

舞台となる2007〜2011年あたりのアメリカのヒットナンバーが映画を彩るのもとても魅力的だ。アメリカ在住であれば年号表記などなくともいつの年を描いているのかがすぐさま分かるのだろう。

そして何よりも素晴らしいのがギャングたちの個性あふれるメンバーたちだろう。初出勤の際にクソ客から「おいそこの“ルーシー・リュウ”」と声をかけられるなど、苦労の絶えない主人公のデスティニー、圧倒的なカリスマで周りを牽引する人情深いボスのラモーナを中心として、人種も育ちも異なるダンサーたちがこれまで自分達を軽んじてきた金融マンを手玉にとっていく様子は痛快そのもの。

本作で一点だけ気になるのが、「映画の外」の話で恐縮だが言いがかり的な批判だ。
ここの映画の評を読むと、「ただの犯罪映画」「男たちが気の毒」などのマイナス評価が時折目につくが、「ただの犯罪映画」といったら全てのギャング映画は無に帰してしまう(なので、ナンセンスな批判だろう)し*1、彼女たちのターゲットとなった男たちが起こした金融クライシスを思えば自業自得としか言いようがない。
こういった批判は、どことなくミソジニーを感じるのは気のせいだろうか。

アカデミーの賞レースからも脱落してしまい、その影響もあってか日本での上映も早々に終わりそうで、何かと過小評価の感が拭えない本作。
だが個人的には多くのアカデミー候補作よりも好きな一作。『スキャンダル』若草物語』『チャーリーズ・エンジェル』など春先は女性映画が多くありこの先も楽しみだ。*2

 

*1:そもそも、この犯罪は実際に明るみになっており、法のもと裁きを受けている。

*2:カメオ出演的にダンサーとして出てくるLizzoやCardi Bの華やかさも素晴らしかった。