海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

ヘレディタリー 継承/Hereditary

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家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。祖母エレンが亡くなったグラハム家。過去のある出来事により、母に対して愛憎交じりの感情を持ってた娘のアニーも、夫、2人の子どもたちとともに淡々と葬儀を執り行った。祖母が亡くなった喪失感を乗り越えようとするグラハム家に奇妙な出来事が頻発。最悪な事態に陥った一家は修復不能なまでに崩壊してしまうが、亡くなったエレンの遺品が収められた箱に「私を憎まないで」と書かれたメモが挟まれていた。「シックス・センス」「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレットがアニー役を演じるほか、夫役をガブリエル・バーン、息子役をアレックス・ウルフ、娘役をミリー・シャピロが演じる。監督、脚本は本作で長編監督デビューを果たしたアリ・アスター。(https://eiga.com/movie/89273/より)

8.9/10.0

上記で引用した映画評論家の柳下毅一郎さんのツイートを見て、本作の鑑賞を終えた人の反応は、二つに分かれるはずだ。

具体的には、

「ありえねーだろ!」

「やっぱりそうか!」

の二つだ。ちなみに僕は後者の人間だ

まず断言してしまいたいのは、この映画は精神病患者について描いた映画だ

そのリアルさは、身近にそういった類の方がいる(いた)方にとってはトラウマになるほどだと思う。僕自身、嫌だった思い出がフラッシュバックした。

この映画で最も恐ろしいのは、トニ・コレットが演じる母親、アニーの顔面であることは満場一致だと思う。そして、この類の病気の人は、まさしく「あの表情」になるのだ。

家族であっても殺す対象のような目で睨みつけたり、ロジカルさ皆無の論法で*1周りの人間を責め立てたり、自分が世界で最も不幸であるかのように振舞っては泣き止まないし、常に自殺願望を抱いている。

そして、そんな本人を「周りは根本的には理解しない(できない)無力さ」を徹底して描いていることが、この映画の恐ろしいところなのだ。

そして、もう一つのテーマはおそらく「新興宗教の恐ろしさ」だろう。
僕の家族が某団体からの執拗な勧誘を受けたものの、入信には至らなかったのでその恐ろしさは(幸いにも)未経験だが、「精神の病」と「新興宗教」のダブルコンボが襲ったであろう、監督の家族に降りかかった不幸を考えると、本当に恐ろしいし気の毒だ

*1:本人の中にはあるようなのだが