海辺にただようエトセトラ

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アベンジャーズ インフィニティ・ウォー/Avengers: Infinity War

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「アイマンマン」「キャプテン・アメリカ」「マイティ・ソー」などマーベルコミック原作で、世界観を共有する「マーベル・シネマティック・ユニバース」に属する各作品からヒーローが集結するアクション大作「アベンジャーズ」シリーズの第3作。アイマンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクといったシリーズ当初からのヒーローたちに加え、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ドクター・ストレンジ」「スパイダーマン ホームカミング」「ブラックパンサー」からも主要ヒーローが参戦。6つ集めれば世界を滅ぼす無限の力を手にすると言われる「インフィニティ・ストーン」を狙い地球に襲来した宇宙最強の敵サノスに対し、アベンジャーズが全滅の危機に陥るほどの激しい戦いを強いられる。監督は「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」を手がけたアンソニージョー・ルッソ兄弟。(http://eiga.com/movie/84139/より)

※ネタバレを多く含むので、未鑑賞の方はご注意ください。

9.8/10.0

1、序論的なもの

5月2日時点で、僕は本作を2回鑑賞した。(IMAX 3Dと、MX4D)
しかし、この映画を見終えた瞬間の気持ちを、いまだにどう表現していいか分からない。今までに味わったことのない衝撃が襲って来たのだ。
アベンジャーズを筆頭に繰り広げられるマーベル・シネマティック・ユニバースMCU)は、本当に単純に説明してしまえば、アメリカのコミックをベースにした「ヒーロー映画」だ。つまり、作り手も受け手も「作り物」や「お約束」を前提にこのシリーズを楽しんでいる(たとえば、どんなにピンチに陥っても最後はヒーローが勝つことを期待して観る)。

僕自身その自覚があるにも関わらず、今までにない強烈な喪失・絶望・虚無感を喰らってしまい、冗談抜きに観終えた後は席から立ち上がれなかった

アイアンマンから劇場で見続けた*110年分の一つの終着点としては、それほどにインパクトのある終わり方であった。

……しかし、こうして「とにかくヤバいものを観てしまった」ことだけをつらつらと文章にしていくうちに、少しだけ頭の中で整理ができてきた気がする。

まとまりのない文章になってしまうかもしれないが、個人的に何が衝撃的だったかを書いていきたいと思う。以降の文章は作品の展開に触れるので、ガチのネタバレとなります。ご注意ください。

 2、シリーズの魅力を逆手に取った映画

この表現が最適であるかどうか分からないが、本作はこれまで僕が魅力を感じていた部分を逆手に取って映画にしている。だからこそ、物語の展開がまるで予想がつかないし、衝撃的なシーンが連続する。本項では、大きく分けて2点、記していきたい。

1、敵が強すぎる

MCU、特にアベンジャーズに関しては、敵役が強くない(魅力的でない)ことがシリーズのキーになっていたように思える。
例えば、バットマンでいうところの「ジョーカー」のような、下手すると主人公を凌駕して魅力を感じさせるキャラクターがこれまで不在だったのだ。

しかし、それはヒーローたちのキャラクターが十分に魅力的であることの裏返しでもある。『1』『2:エイジ・オブ・ウルトロン』の敵を振り返ると、一度はヒーローたちを危機に陥れるが、ぶっちゃけるとそれはヒーロー内の仲間割れも多分に含んだ結果であるので、両作とも敵を倒すシーンは結構あっさりしている。
視聴者側も「そろそろヒーロー側が巻き返すっしょ?」と予定調和を楽しんでいた向きもあるくらいだ。

しかし、本作はそんなふうに舐めプしていても、予定調和な結末は訪れない。
何を隠そう、サノスが完全勝利を迎えてしまうからだ。

戦闘力ではソーとともにシリーズ最強を誇るハルクが、序盤でサノスにあっさり倒されてしまうので、度肝を抜かれる。さらに言うとロキもかなり無残な殺され方をしてしまうため、序盤からもう絶望感がものすごい。

特にロキはシリーズ全体を通してコメディ的な役回りで、愛されキャラとして地位を確立していた分ショックがデカかった。つまるところ、サノスへの敵としてのヘイト感情が増幅され、本シリーズで初めて強く「敵として意識させられる」キャラになったとも言えるのだ。

2、ユーモアが悲劇の前振りになっている

アベンジャーズシリーズで何よりも僕が好きなのが「ユーモアを忘れない」点だ。どれだけ窮地に陥っても*2ジョークを口ずさみながら世界を救う姿勢が本当にカッコいいと思う(さらに言うと、時にはユーモアが物語の伏線になっていたりするから、結構バカにできない)。

今回も戦闘中のユーモア、ギャグの連発は相変わらず繰り返されるのだが、それらが全て悲劇に収束してしまう点がとんでもなく悲しい

例えば、スパイダーセンスで宇宙船を察知し(というか、あんだけデカい宇宙船がやってきたらスパイダーセンスで感知するまでもないだろ!って感じだけど)、トニーたちに加勢するピーター・パーカー。
トニーには「家に帰れ」と再三言われていたが、ピーターは敵の行方が気になるゆえ宇宙船に残ってしまう。
その時に言い残す言葉が「バスで家に帰っておけば良かった」というセリフだ。この部分はギャグテイストで演出されているのだが、ピーターに訪れるラストがどうしようもなく悲しい。

サノスによって人類の半分が消えていくラストのシーンで、ピーターはトニー・スタークの腕に抱かれながら「怖い怖い」という言葉を残して消滅してしまう

子供らしい無邪気さが愛らしく、歴代最高のピーター・パーカーであったと感じていたため、このシーンは本当にショックだった。
ここで誰もが「彼がバスに乗ってそのまま帰っていたら、消えずに済んだ未来もあったかもしれない」と考えてしまったと思う。
更に言えば、あのジョークのシーンで笑ってしまった自分の不謹慎さにも怒りを覚えてしまうほどに、悲しい出来事であった

 3、思い入れるシーンが人によって異なる作品

これはシリーズを20本作っているゆえの強みであると思うが、本作は人によって「シーンの重み」が変わることも興味深い点だと思う。

僕であればアメコミにハマったきっかけがサム・ライミによる「スパイダーマンシリーズ」だったので、上記のようにピーターの消滅は筆舌に尽くし難い悲劇だった。

本作は、製作陣の性格が悪いせいかそれぞれの単独作ごとに丁寧に悲劇が用意されているのも見所だ。
「ソー」シリーズが好きな人にとっては上記のロキが、「キャプテン・アメリカ」シリーズが好きな人にとってはバッキーが……という具合に、どのシリーズに愛着を持っていても、等しく強烈な展開が待ち受けているのだ。
「謹慎」の一言で作中1秒も出てこないホークアイだって悲劇みたいなもんだろう*3

この点は死ぬほどキャラが増えたにもかかわらず、ルッソ兄弟によるジョス・ウィードン(1、2の監督)超えのスーパー交通整理術が発揮された瞬間だ。膨張し続ける世界にもかかわらず、丁寧に脚本を作ってくれているので本当に惜しみない感謝を捧げたい。

4、終わりに

まとめる気もないままつらつらと書いてしまったわけだが、本作はそれほど観る者を突き動かすエネルギーを秘めた作品であることは間違いない。
1年後の続編も楽しみで仕方がないが、本作も「サノスが主役のアンチヒーロー映画」として観ると、1本の映画として終わりを迎えている点も凄い

今年暫定1位の映画だと断言します。

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↑最低限この2本を観ておけば話は繋がります。

*1:ソーは『ラグナロク』以外はソフトで済ましています。すんません!

*2:さすがにガチで危険な時は言わないが

*3:アントマンは単独作が控えているので、もしかするとシビルウォーでもナイスコンビだった、謹慎組のストーリーが描かれることを期待