海辺にただようエトセトラ

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「映画オールタイムベストテン:2017」に投票しました

ワッシュさんの運営するブログ、「男の魂に火をつけろ!」の毎年恒例の映画ベスト企画に投票しました。
※記事はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20171031

「アニメ映画」「音楽映画」「筋肉映画」など、毎年さまざまなジャンルでランキング集計を行なっていたこの企画、今回は満を持して「オールタイムベスト」ということで過去最大級の盛り上がりになるのではないかな、と思います。僕も映画好きの端くれとして是非投票しよう!と10本を考え始めたのはいいものの、考えるまでもなく10本に絞るのは当然無理ですよ。ウンウン悩んだ結果、打開策として個人的な「裏テーマ」を設けて作りました。

そんなわけで、以下が僕のオールタイムベストテンです!

  1. あの夏、いちばん静かな海(1991年日本、北野武監督)
  2. スパイダーマン(2002年米、サム・ライミ監督)
  3. オアシス(2002年韓国、イ・チャンドン監督)
  4. Mommy/マミー(2014年カナダ、グザヴィエ・ドラン監督)
  5. 秒速5センチメートル(2007年日本、新海誠監督)
  6. 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年日本、庵野秀明監督)
  7. 仁義なき戦い 広島死闘編(1973年日本、深作欣二監督)
  8. グラン・トリノ(2008年米、クリント・イーストウッド監督)
  9. クーリンチェ少年殺人事件(1991年台湾、エドワード・ヤン監督)
  10. ウォーターボーイズ(2001年日本、矢口史靖監督)

ちなみに僕が設けた裏テーマは「青春ムービー」です。青春というと一般的には中学〜高校生の思春期の頃を指すと思うのですが、「気の持ちようでいつだって青春になるだろ?」っていうメッセージを僕はこれらの映画から(勝手に)受け取りました。それではつらつらと各映画にコメントつけていきたいなと思います。

1位 あの夏、いちばん静かな海(1991年日本、北野武監督)

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北野武の映画といえば「バイオレンス」と言われることが多いですが、個人的にはすべての北野作品に溢れているのって、「照れ臭さ」だと思うんですよね。ソナチネの海岸でのふとしたヤクザ同士のじゃれあい、HANA-BIの主人公が借金取りを石でボコす前に奥さんに「ちょっと待っててね」って声かけるところを見てみてください。
これって、「思わず照れちゃっている自分」を見せることで、「目の前の人に対して最大級の親愛の情を示」しているシーンに見えます。不器用なんだか真っ直ぐなんだかよくわかんない感情なんだけど、個人的にはメチャクチャ共感できる愛の表現方法です。本作はストレートに、その「照れ臭さ」が炸裂していて、ずっとテレビに流しっぱにしていても良い傑作です。

サーフィン(海)に見せる愛情、彼女に見せる愛情(窓ガラスのシーンは超名シーン!)聾唖のカップルということでセリフは一言も発さないのだけれど、言葉の無意味さが分かる超絶傑作ですね。ビートたけし名義で書いた最新小説、『アナログ』が次回の監督作になるかも、なんて記事をネットで見ましたが、恐らく本作の精神的な続編となると思います(それを言うと『アキレスと亀』も捨て難いのだけれど)。楽しみに待っています!

2位 スパイダーマン(2002年米、サム・ライミ監督)

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スパイダーマンはシリーズが3つあるのだけれど、ハッキリいうとこの初代スパイダーマンって一番青春色が薄いと思います。ただ、ヒーロー稼業に忙しいあまり意中の人を親友に奪われたりしてしまう非モテのピーターを見ていると、青春を謳歌しきれない若者の姿に号泣するわけですよ。自分にとって何が最も大切なものなのか。その自問自答の末にこの「1」でくだしたピーターの決断があると思うと、「あんたが大将!」と言わずにはいられない。自分に課された使命に一直線になる。これも一つの青春でしょ!(暴論)

3位 オアシス(2002年韓国、イ・チャンドン監督)

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前科者と重度の脳性麻痺患者。社会から煙たがれる二人が紡ぐ世界の美しさといったら。主人公の最後の行動に、涙しない人なんているんでしょうかね。
純愛っつーのはこういうのを言うんだよ!と声を大にして言いたい。

4位 Mommy/マミー(2014年カナダ、グザヴィエ・ドラン監督)

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早熟の天才、ドランによる2014年作。インスタグラムのような1:1の画面比率で進む物語が、オアシスがかかった途端に…この瞬間、未見の人には是非見てもらいたい。青春!ってなります。

5位 秒速5センチメートル(2007年日本、新海誠監督)

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青春を引きずりすぎるとヤバいよっていう教訓映画。でも本人たちの記憶にすらないのにくっつけさせられる『君の名は。』よりも、この映画の結末には希望があると思っている。だって幻影を吹っ切ったラストの主人公は、絶望ではなく、安堵に近い表情をしているじゃないですか。
物語(ラブコメ)における「ヒーロー/ヒロインの関係」って、「くっつかなければいけない」という呪縛に縛られていると思うんだけど、この作品はあえてその呪縛からの解放を試みたんだと思うのですよ。

6位 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年日本、庵野秀明監督)

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一方この作品は、真っ当な青春を送れないとこんなこと(を表現する人間)になっちゃいますよ、という教訓映画。監督の精神構造が歪みまくっていて、なおかつエヴァンゲリオンという作品は「監督のリアルタイムの精神状況をダイレクトにフィードバックした作品」というのだから、劇中にまともな人間はほとんどいない。
冒頭から主人公がヒロインの裸体で自慰をし出すという、トラウマ級のシーンをぶっ込まれるのですが(これも以降の残虐シーンに比べればまだマシというね…)、今思い返すとこのシーンも、アスカやレイを慰み者にしていた当時のオタクへの当てつけなんだろうなぁと感じる。
そうなると、エヴァは、「消費に徹するオタクへのアンチテーゼ」をぶっ込んだ、オタクコンテンツという、なんとも歪みとねじれで出来上がった作品なんですよね。
それでも、極度の人間嫌いの庵野監督が最終的に導き出した答えが、「他者のいる世界を受け入れる」ということなんだから、こんだけ希望に満ちた映画もないわけですよ。

7位 仁義なき戦い 広島死闘編(1973年日本、深作欣二監督)

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この作品はやくざにも青春はあるということを教えてくれた映画です(意味不明)。とにかく破天荒でキ印なキャラクターの千葉真一と、甘い言葉とともに組織に翻弄される愚直な男、北大路欣也の2大主人公のコントラストが強烈です。

8位 グラン・トリノ(2008年米、クリント・イーストウッド監督)

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この作品はジジイにも青春があることを教えてくれた映画です。子供も自立して、兵役も仕事もリタイヤした頑固な老人が見出す人生の終え方をモチーフに、移民に溢れるアメリカが築くべき未来はなんであるかを描いた傑作映画です。

9位 クーリンチェ少年殺人事件(1991年台湾、エドワード・ヤン監督)

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ずっと観てぇと思っていた幻の作品は、想像を超える大青春映画でした(完全版の日本公開は今年だったのです)。ストリートの不良少年たちのかっこよさ、4時間あるからこそ深掘りできる人間関係、少年少女たちの淡い思い……。長尺の映画にしか味わえない心地いい疲労感に包まれた瞬間は忘れられません。

10位 ウォーターボーイズ(2001年日本、矢口史靖監督)

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「青春」をテーマに選んだのですが、真っ当な青春映画はこれだけかもしれません……。リアル青春時代に観た映画でもあり、思い出深いのでランクイン。矢口監督は老若男女楽しめて、かつクォリティに一切の妥協を見せない邦画界の良心。

とまぁ、こんな感じです。凝りに凝って選んだというよりはかなり気軽に選んだ(しかし大切な)作品が揃いました。
冒頭のワッシュさんのアンケート、締め切りは12月17日なので、映画の鑑賞本数に関わらず皆さんもコメント欄で投票してみてはいかがでしょうか(祭りは参加者が多いほど楽しいものです)。
ワッシュさんの記事にもありますが、「今、この瞬間思いついたもの」で投票しないとキリがないので、悩みすぎないのがポイントです。