海辺にただようエトセトラ

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劇場版 BiSキャノンボール2014

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全裸に見える姿で撮影されたプロモーションビデオや、スクール水着で客席にダイブするパフォーマンスなど、破天荒な活動でアイドルシーンの異端児として注目を集め、2014年7月に解散した個性派グループ「BiS」に、AV監督として知られるカンパニー松尾が密着してカメラを回したドキュメンタリー。企画AVから派生した作品ながらも、劇場公開されて口コミで評判が広まったカンパニー松尾監督作「劇場版 テレクラキャノンボール2013」のコンセプトを取り入れ、「テレクラキャノンボール」同様にAV監督たちがBiSメンバーひとりひとりに密着。14年7月8日に横浜アリーナで行われた解散ライブ「BiSなりの武道館」の前日から翌日まで3日間のメンバーたちの様子を捉えた。(http://eiga.com/movie/81089/より)

6.5/10.0

Netflixに上がっていたので観賞。僕自身、『劇場版テレクラキャノンボール2013』は公開当時どハマりし、いろんな友人を誘っては合計4回も見てしまうほどだった(のちにまんまとBlu-rayも購入!)。

しかし本作は、名前程度しか知らないアイドルたちとの企画もので、「アイドルハメたら普通に業界から消されるだろ」なんて思っていたので、公開当時はスルー。しかし、現在アイドル界隈に片足突っ込んだ身からすると、BiSの遺した痕跡が計り知れないことがわかり、今回ようやく視聴することに。

結論から言うと、全体の半分は楽しめたけど残りの半分は残念な気持ちでいっぱいになる作品だった。

[以下、公開から時間も経っているのでネタバレ交えつつ感想を書きます]

まずはじめに書いておくと、本作はBiSについて知らなくても鑑賞のハードルにはならない。そもそも出演する監督陣が誰一人としてBiSについて知らないからだ。与えられる主な情報は、

  • あと1日で解散するグループ
  • 従来の「アイドル」という枠組みから外れた過激な活動(ヌードグラビア撮影や「揉みに行けるアイドル」という名称)で名を馳せたグループ
  • その過激な活動ゆえに本来の到達目標であった武道館は出禁となり、ラストライブは横浜アリーナで行う

といったものだけ。

その情報だけを得ながら映画の序盤では梁井さんとバク山さん(確か)がニヤニヤしながら彼女たちのヌードグラビアが載っているプレイボーイを見て品定めしている(恐らく「どいつがヤれそうか」とか考えているのだろう)シーンが強烈に印象に残る。

恐らくこのシーンを、「またこいつらはしょうもないこと始めてホント馬鹿だなぁ〜」と言って笑えるか、「解散前日である日にこんなことをするのは残酷すぎる」と怒るかで、本作の印象は大きく決まると思う。

僕はこの時に完全に後者のスイッチが入った。

というのも、今回のルールはアイドルたちに事前に「解散ドキュメンタリーを撮る」ということしか伝えていないのだ。いくら破天荒な活動を続けていたからといって、20そこそこの女の子たちが最後の晴れ舞台を前に、精神が不安定になっているであろう状況でこんな企画を用意することは、果たして許されるのか? 「それがBiSなんだ!」とか「カメラが回っている中でハメられたら自己責任(仕掛け人であるマネージャー談)」という指摘があるのは認めるし、究極ファンが笑えるのなら「アリ」でいいじゃん、という意見があってもいいと思う。

なのであくまで僕個人の感情の尺度でしかないが、まず状況そのものからしてこの作品に100パーセント乗れなかった、ということだけは書いておきたい。

個人的な話〜浪費=

ここで少し個人的な話をしておきたい。僕は自他共に認める浪費家で、貯金の額はかなり少ないし、部屋には本やCD、レコード、DVDその他もろもろが溢れている。
人からすれば「物質主義にまみれた快楽主義者」に見えるかもしれないが、逆に言えば「お金にあまり執着していない」のだ。僕が金と引き換えに手に入れたものは、いずれも「出したお金以上に価値のある(=自分の人生を充実させる)もの」と捉えているので、だからこそ躊躇なくお金を出せるのだ。

※もちろん30も目前に迫った現在、「このままじゃやばい」感はひしひしと感じているので、これからはむやみな浪費は控えていきたいと思っている。

閑話休題〜不満点①

アイドルの応援活動というのは非常に金のかかるものだ。ライブの遠征やリリース物の全レパートリーのコンプリート、ランダム性のある商品の多々買いなど枚挙に遑がない(僕はここまでコアにハマっていませんが)。
恐らく多くの人が平均的な収入の中でやりくりをしては、捻出したお金でアイドルへの貢ぎを行っているのだ。

彼らはなぜここまでできるのか、もちろんつぎ込んだお金以上に大事なものが目の前にあるからに他ならない。個人によって純度は違うかもしれないが、「愛」というしかほかない感情で、口座の金をガシガシつぎ込んでるのだ。

そこに対して運営が持つべきものは、やはり「愛」以外ないんじゃないかと思える。いわゆる地下アイドル(インディーズ系のアイドル)の運営はあくどい商売をして儲けているというよりも、かなりカツカツな印象を受ける。彼らの持つ想いは、「うちのアイドルがトップに立つんだ!」という揺らぎない信念だ。

……そういう視点で見ると、BiSの仕掛け人であるマネージャーは、果たしてどこまでの「愛」でこの企画を持ち込んだのか。その部分がこの映画には写されていなくて納得できなかった。彼の本心がどこにあるかはさておき、「解散するアイドルに、マネージャーが内緒でキャノンボール企画を持ち込む“前代未聞感”すごくね?」という自身の売名にしか見えないところが残念だし、「BiSのファン(=研究員)じゃなくてよかったー」と思えてしまう(当たり前だが、本来であれば逆の思いを抱かせるべきだろう)。

不満点②

そんな運営面への不満を抱くのと同時に、キャラ立ちがすぎる監督たちにも不満を抱いていく。

特にひどいのがビーバップみのるさんと、担当であるテンテンコとのやり取りだ。
キャノンボールはその日撮れた映像を各自がプレゼンする品評会によって点数をつけていくのだが、みのるさんの時に誰かが「やっぱ人の気持ちを考えない奴は強ぇなぁ〜」的なことを口にしていた気がする。まさしくこの言葉の通りだった。

テンテンコがリハ前に言っていた「伝説になりたい」「ホドロフスキーが好き」といった言葉にかこつけては、「ここで俺とハメ撮りしたら今までのアイドルを超えられる」「アイドル界のホドロフスキーになれる」的な言葉で説得する洗脳チックなシーンはひたすら残酷に見えた。
しかもこのやり取りが、解散ライブの前日リハを終えた、深夜4時くらいに密室で行われるわけである。

みのるさん自身は自分の仕事を全うしようとしているのかもしれないが、本来仕事は相手あってのことだろうし、今回の相手は今までの人生で最も大きな舞台に立とうとしている女の子だ。そこに対して配慮する必要はあったのではないだろうか。

もちろん、解散ライブ終了後に企画の意図を察して、怒りや悲しみのあまり号泣するファーストサマーウイカのシーンも本当にしんどかった。
その際繰り出す、「私はこういう風にされても構わないけど、他のメンバーのことを考えると本当にかわいそう」というセリフは、他人を責める時の常套句ではあるが、この言葉を使うことで自分が傷ついていることも露呈していて、生々しさが凄まじかった。

ここは松尾さんが紳士的に対処してくれていたので、救われる部分はあったけど。

良かった点

もちろん、一人の受け手がここまで書き連ねるほどに本作にエネルギーがあったことは認めたい。中には「ほんとにいいな」と思えるシーンも多かったからだ。

まずは全体的に監督勢が思ったより紳士的であったということ。カンパニー松尾さんとバクシーシ山下さんの年長コンビはライブ前日、担当アイドルが寝る時は部屋を退出していたし(バク山さんは追い出されたようなもんだが)、相変わらず悪人になりきれないイケメン、嵐山みちるさんは担当アイドルのヒラノノゾミからいい言葉を引き出していた。

概要としてはこうだ。
「世間のBiSのイメージは“作られたモノ”。メンバーは本来“普通の女の子”が大人たちの企画に乗っかって色々過激なことをやってきたのだ。だから解散も必然だし、ホッとしている」
いつのまにかただの泣けるドキュメンタリーと化した瞬間であり、何よりこれを聞いたのがみのるさんじゃなくて本当に良かったと心から思った瞬間だ

以降のみちるさんのパートは人間味溢れる温かいものになるので、安心して見ていられる。

あとは梁井さんの落とし前の付け方もとても良かった。これはぜひ本編を見て確認してもらいたい。極力人を傷つけず、あらゆるバランスを考慮してひねり出したアクションであると思うとバカバカしくもうるっときてしまうのも事実。

しかし一方で、メンバー内で最も怒ってたのはコショージメグミなのではないかと個人的には思っている。
梁井さんがエロ動画を見せた時の反応や、その後のやり取りが一番“いわゆる女の子ぽさ”を出していたので、「ある意味今後のやり取りをシャットダウンしたんだな」と感じたからだ。

最後に

こうして不満点と良かった点を書き連ねて見たが、『テレキャノ2013』が爆笑できて『BiSキャノ』にはハマりきれなかったのか。
鑑賞しながら思考していたのだが、「受け手自身にある差別心」を明らかにされている気分になってしまったのが大きい。

「援助を受ければハメ撮りOK」と考えている『テレキャノ2013』の(素人)女優も、「解散を控えたアイドル」も、状況は違えど同じ女性だ。モラリストを気取るのなら両方に憤るべきはずなのに、線引きしてしまっている方は何人かいるのではないだろうか。

そう考えると5時間バージョンとなっている『完全版』も見た上で自分の感情に整理をつけるべきかもしれないのかな、と思ってしまう。(何度見てもみのるさんの洗脳めいた例のシーンはしんどいと思うだろうけど)

今回の企画では、監督たちも「雇われ側」だったこともあるだろうし、求められた役割(ハメ撮り)をこなすことがベストだったろうから、一概に責められることでもないのだけれどもね……

補足

そして来年とんでもないものが上映予定ということで↓

見た感じ、正統派青春ドキュメンタリーって感じですが、果たして、、、。