海辺にただようエトセトラ

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町田康『ギケイキ』

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作家であり、パンクロックシンガーでもある町田康源義経を主人公にした現代語大河小説(全4部作の予定)。単行本は2016年5月12日発売。

8.0/10.0

町田康の「現代語訳」といえば『日本文学全集シリーズ』の『宇治拾遺物語』が昨年話題になったが、本作もそちら同様、軽快すぎる日本語が笑いを誘う小説だ。

基本的に義経の一人称で物語は進むが、「ミーティング」だの「マネジメント」だのカタカナ用語は平気で連発されるし、義経による周りの人間の人物評が辛辣極まりなくひたすらに笑える。

後半4分の1ほどを割いて紹介される弁慶もそうだが、「歴史上の偉人」ではなく「血の通った人間」としてそれぞれの人物に愛着や親近感を抱かせる文章は見事だ。

以前町田康による『宇治拾遺物語』の朗読会に行ったが、朴訥とした、とぼけたような文体そのままの口調で読み上げる様がなんとも面白く本作も脳内再生をしては楽しませてもらいました。

ただ、一部サービス過剰な部分が好き嫌いを分けそうな気もする。しかし作家がサービス精神旺盛な分は一向にかまわないので、このまま突き進んで行ってほしいと思う。