海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

わたしたちの家

image

2017年PFFアワードグランプリ受賞作品で、東京藝術大学大学院で黒沢清諏訪敦彦に師事した清原惟監督の劇場デビュー作。父親が失踪して以来、母の桐子と2人暮らしをするセリはもうすぐ14歳になるが、母に新しい恋人ができたことで複雑な気持ちになっていた。一方、目が覚めるとフェリーに乗っていたさなは、自分に関する記憶をなくなっていた。自分がどこからこのフェリーに乗ったかも思い出せない。あてのないさなは船の中で出会った透子という女性の家に住まわせてもらうことになる。父親を失ったセリ、記憶を失ったさな、まったく別々の2つの物語が一軒の同じ家の中で進行していく。http://eiga.com/movie/87918/より)

続きを読む

勝手にふるえてろ(映画)

image

芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説の映画化で、恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走する様を、松岡茉優の映画初主演で描くコメディ。OLのヨシカは同期の「ニ」からの突然の告白に「人生で初めて告られた!」とテンションがあがるが、「ニ」との関係にいまいち乗り切れず、中学時代から同級生の「イチ」への思いもいまだに引きずり続けていた。一方的な脳内の片思いとリアルな恋愛の同時進行に、恋愛ド素人のヨシカは「私には彼氏が2人いる」と彼女なりに頭を悩ませていた。そんな中で「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこう」という奇妙な動機から、ありえない嘘をついて同窓会を計画。やがてヨシカとイチの再会の日が訪れるが……。監督は「でーれーガールズ」の大九明子。2017年・第30回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞した。http://eiga.com/movie/86705/より)

続きを読む

ビジランテ

image

「22年目の告白 私が殺人犯です」「SR サイタマノラッパー」シリーズの入江悠監督によるオリジナル脚本作品。大森南朋鈴木浩介桐谷健太の主演で、入江監督の地元である埼玉県深谷を舞台に地方都市特有の暗部を描いていく。高校時代に行方をくらました長男の一郎、市議会議員を務める次男の二郎、デリヘルの雇われ店長をしている三男の三郎。三兄弟はまったく世界の異なるそれぞれの道を生きてきた。兄弟の父親が亡くなり、失踪していた一郎が30年ぶりに突然帰ってきたことにより、三兄弟の運命が交じり合い、欲望や野心、プライドがぶつかり合う中で、三兄弟を取り巻く事態は凄惨な方向へと動いていく。大森、鈴木、桐谷がそれぞれ長男、次男、三男を演じるほか、篠田麻里子が次男の妻役で出演。(eiga.com/movie/86664/より)

続きを読む

「映画オールタイムベストテン:2017」に投票しました

ワッシュさんの運営するブログ、「男の魂に火をつけろ!」の毎年恒例の映画ベスト企画に投票しました。
※記事はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20171031

「アニメ映画」「音楽映画」「筋肉映画」など、毎年さまざまなジャンルでランキング集計を行なっていたこの企画、今回は満を持して「オールタイムベスト」ということで過去最大級の盛り上がりになるのではないかな、と思います。僕も映画好きの端くれとして是非投票しよう!と10本を考え始めたのはいいものの、考えるまでもなく10本に絞るのは当然無理ですよ。ウンウン悩んだ結果、打開策として個人的な「裏テーマ」を設けて作りました。

そんなわけで、以下が僕のオールタイムベストテンです!

続きを読む

交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1

image

2005~06年にテレビ放送されたSFロボットアニメ「交響詩篇エウレカセブン」を新たによみがえらせた劇場版3部作「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」の第1部。テレビシリーズの物語を再構成し、新作映像と再撮影映像を交え、すべてのセリフも再構築。作中で何度か言及されてきた過去の大事件「ファースト・サマー・オブ・ラブ」を初めて映像化し、新たな物語を紡ぎ出す。10年前に世界を揺るがせた大事件「ファースト・サマー・オブ・ラブ」で父アドロックを失った少年レントンは、辺境の街ベルフォレストで単調な日々を過ごしていた。そんなある日、LFOと呼ばれる人型マシンのなかでも世界最古の機体「ニルヴァーシュ」がレントンの前に降り立ち、そのコクピットからエウレカと名乗る少女が姿を現す。偶然の出会いから旅に出ることになったレントンエウレカだったが……。(http://eiga.com/movie/86717/より)

続きを読む

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

image

絶妙な細かいディテールが人気の渋谷直角によるサブカルマンガを、妻夫木聡水原希子の共演、「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督により実写映画化。奥田民生を崇拝する雑誌編集者を主人公に、全編にわたって奥田民生の楽曲が使用されるラブコメディ。「力まないカッコいい大人」奥田民生に憧れる編集者コーロキが、おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動となった。仕事で出会ったファッションプレスの美女、天海あかりに一目ぼれしたコーロキは、あかりに見合う男になるべく、仕事に精を出し、デートにも必死になる。しかし、やることなすことすべてが空回り。あかりの自由すぎる言動に常に振り回され、コーロキは身も心もボロボロになってしまう。コーロキ役を妻夫木、あかり役を水原が演じるほか、松尾スズキ新井浩文安藤サクラリリー・フランキーらが脇を固める。(eiga.com/movie/84985/より)

続きを読む

シン・ゴジラ

image

ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に 登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官矢口蘭堂を演じる長谷川博 己、内閣総理大臣補佐官赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が 参加している。

http://eiga.com/movie/81507/より)

9.0/10.0

ハリウッド版は劇場で観たけど、良くも悪くも「怪獣の出てくるハリウッド大作 」 という印象でしかなく(家族愛がテーマになっちゃう感じとか含めてね…)、ゴジラに明るくない僕にとっては「こんなものなのかな?」ぐらいの感想しかなかった。

今回、正真正銘のメイド・イン・ジャパンのフィルムとして上映されたゴジラは、キャッチコピー「現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)」が表しているように、フィクションを通して日本という国を考えなおす、捉えなおすような作品となっている。

原子力という制御しがたい力を持った怪物を、日本中が混乱に陥った状況でいかにして止めるか。否が応にも思い出してしまうことが、日本で生きている人にはあるはずだ。

物語の中では対照的な二人の人間を中心にドラマが展開される。理想的な解決手段を模索し、各界のはぐれものを集める矢口(長谷川博己)と、政治的な根回しを着実に行いながらしかるべきポストに就き、現実的な対処を行おうとする赤坂(竹野内豊)だ。

一方で物語の脇を固める人物(総勢300人越え!)も、ふとした挙動や発言で人となりを見せていく。庵野監督の脚本テクニックが光る。

例えば大杉連演じる内閣総理大臣は、 前代未聞の事態に加え、内外の圧力やいたずらに立て込む会議の中でリーダーとしての手腕を発揮できているとは言い難い。

しかし要所要所の官邸での発言では、政治家としての矜持や誇りを持っている様子が垣間見える。しかし、これが国民の耳に届くことは当然ない。映画自体には総理が世間に批判される描写はないが、一般的な国民の視点から見れば「でくの坊」と罵られていることだろう(最悪なことに、総理は緊急記者会見で大きな失態を犯してしまう)。

このような細かいリアリティが積み重なって、「怪獣映画」という一見チャイルディッシュな映像作品の鑑賞強度を上げている。安易に難病で人が死んで「悲しいよ~。だけど僕はこの悲劇を乗り越えて生きていくからね~」 みたいな映画のほうがよっぽど幼稚なわけで。

純粋な映画としてもクォリティが高い。ギリギリで置いていかれそうになりながらも、観客がなんとか付いてこれるように計算されつくしたスピード感のマシンガン会話劇や字幕は、庵野映画(てゆーかエヴァ)の真骨頂。映像編集の上手さも合わさって、見ているだけでアドレナリンがドバドバ出てきて楽しい。

あ、あと予告編で(悪い意味で)話題になった石原さとみの大根ぷりは、映画本編では「ルー語を使うちょっと変わったねーちゃん」くらいの印象で画面に収まっていたので心配に思っていた人は安心していいかと。「日本人の祖母を持つ、エリートアメリカ人政治家 」という装飾のやたら多いキャラを投入することで、日本人的な仕事の進め方の違和感を相対化させる「装置」として上手く機能していたからだろう。

恐らく見れば見るほど新たな発見に気付ける密度の高い映画。