海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1

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2005~06年にテレビ放送されたSFロボットアニメ「交響詩篇エウレカセブン」を新たによみがえらせた劇場版3部作「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」の第1部。テレビシリーズの物語を再構成し、新作映像と再撮影映像を交え、すべてのセリフも再構築。作中で何度か言及されてきた過去の大事件「ファースト・サマー・オブ・ラブ」を初めて映像化し、新たな物語を紡ぎ出す。10年前に世界を揺るがせた大事件「ファースト・サマー・オブ・ラブ」で父アドロックを失った少年レントンは、辺境の街ベルフォレストで単調な日々を過ごしていた。そんなある日、LFOと呼ばれる人型マシンのなかでも世界最古の機体「ニルヴァーシュ」がレントンの前に降り立ち、そのコクピットからエウレカと名乗る少女が姿を現す。偶然の出会いから旅に出ることになったレントンエウレカだったが……。(http://eiga.com/movie/86717/より)

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奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

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絶妙な細かいディテールが人気の渋谷直角によるサブカルマンガを、妻夫木聡水原希子の共演、「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督により実写映画化。奥田民生を崇拝する雑誌編集者を主人公に、全編にわたって奥田民生の楽曲が使用されるラブコメディ。「力まないカッコいい大人」奥田民生に憧れる編集者コーロキが、おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動となった。仕事で出会ったファッションプレスの美女、天海あかりに一目ぼれしたコーロキは、あかりに見合う男になるべく、仕事に精を出し、デートにも必死になる。しかし、やることなすことすべてが空回り。あかりの自由すぎる言動に常に振り回され、コーロキは身も心もボロボロになってしまう。コーロキ役を妻夫木、あかり役を水原が演じるほか、松尾スズキ新井浩文安藤サクラリリー・フランキーらが脇を固める。(eiga.com/movie/84985/より)

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シン・ゴジラ

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ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に 登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官矢口蘭堂を演じる長谷川博 己、内閣総理大臣補佐官赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が 参加している。

http://eiga.com/movie/81507/より)

9.0/10.0

ハリウッド版は劇場で観たけど、良くも悪くも「怪獣の出てくるハリウッド大作 」 という印象でしかなく(家族愛がテーマになっちゃう感じとか含めてね…)、ゴジラに明るくない僕にとっては「こんなものなのかな?」ぐらいの感想しかなかった。

今回、正真正銘のメイド・イン・ジャパンのフィルムとして上映されたゴジラは、キャッチコピー「現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)」が表しているように、フィクションを通して日本という国を考えなおす、捉えなおすような作品となっている。

原子力という制御しがたい力を持った怪物を、日本中が混乱に陥った状況でいかにして止めるか。否が応にも思い出してしまうことが、日本で生きている人にはあるはずだ。

物語の中では対照的な二人の人間を中心にドラマが展開される。理想的な解決手段を模索し、各界のはぐれものを集める矢口(長谷川博己)と、政治的な根回しを着実に行いながらしかるべきポストに就き、現実的な対処を行おうとする赤坂(竹野内豊)だ。

一方で物語の脇を固める人物(総勢300人越え!)も、ふとした挙動や発言で人となりを見せていく。庵野監督の脚本テクニックが光る。

例えば大杉連演じる内閣総理大臣は、 前代未聞の事態に加え、内外の圧力やいたずらに立て込む会議の中でリーダーとしての手腕を発揮できているとは言い難い。

しかし要所要所の官邸での発言では、政治家としての矜持や誇りを持っている様子が垣間見える。しかし、これが国民の耳に届くことは当然ない。映画自体には総理が世間に批判される描写はないが、一般的な国民の視点から見れば「でくの坊」と罵られていることだろう(最悪なことに、総理は緊急記者会見で大きな失態を犯してしまう)。

このような細かいリアリティが積み重なって、「怪獣映画」という一見チャイルディッシュな映像作品の鑑賞強度を上げている。安易に難病で人が死んで「悲しいよ~。だけど僕はこの悲劇を乗り越えて生きていくからね~」 みたいな映画のほうがよっぽど幼稚なわけで。

純粋な映画としてもクォリティが高い。ギリギリで置いていかれそうになりながらも、観客がなんとか付いてこれるように計算されつくしたスピード感のマシンガン会話劇や字幕は、庵野映画(てゆーかエヴァ)の真骨頂。映像編集の上手さも合わさって、見ているだけでアドレナリンがドバドバ出てきて楽しい。

あ、あと予告編で(悪い意味で)話題になった石原さとみの大根ぷりは、映画本編では「ルー語を使うちょっと変わったねーちゃん」くらいの印象で画面に収まっていたので心配に思っていた人は安心していいかと。「日本人の祖母を持つ、エリートアメリカ人政治家 」という装飾のやたら多いキャラを投入することで、日本人的な仕事の進め方の違和感を相対化させる「装置」として上手く機能していたからだろう。

恐らく見れば見るほど新たな発見に気付ける密度の高い映画。