海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

日本文学

姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋,2018年)

2016年に起こった、東大生5人による強制わいせつ事件に着想を得た小説。 横浜市郊外のごくふつうの家庭で育ち女子大に進学した神立美咲。渋谷区広尾の申し分のない環境で育ち、東京大学理科1類に進学した竹内つばさ。ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはず…

村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋,2014年)

舞台俳優・家福をさいなみ続ける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのかを追う「ドライブ・マイ・カー」。妻に去られた男は会社を辞めバーを始めたが、ある時を境に店を怪しい気配が包み謎に追いかけられる「木野」。封印されていた記憶の数々を解く…

町田康『ホサナ』(講談社,2017)

執筆5年。人間の根源を問う傑作大長編小説。『告白』『宿屋めぐり』に続く、町田康の新たな代表作、ここに誕生! ホサナ。私たちを救ってください。 愛犬家の集うバーベキューパーティーが、全ての始まりだった。私と私の犬は、いつしか不条理な世界に巻き…

舞城王太郎『私はあなたの林檎の瞳』『されど私の可愛い檸檬』(講談社,2018)

舞城王太郎の「新プロジェクト」として2018年に2カ月連続刊行された短編集。2018年10-11月発売。 『私はあなたの林檎の瞳』 ずっと好きで仕方がない初恋の女の子。僕の告白はいつだって笑ってかわされる。でも、今好きなものを次なんて探せない!(表題作)…

古川日出男『おおきな森』(講談社,2020)

東北から南米へ戦前から現代へ時空の森を貫きその列車は疾る 小説家兼探偵・坂口安吾が、疾走した高級コールガールの行方を追う「第一の森」。記憶を持たない男・丸消須ガルシャが乗った列車で不可解な殺人事件が起きる「第二の森」。そして私は小説に導かれ…

古川日出男『とても短い長い歳月』(河出書房新社,2018)

ニップノップのDJが過去作をミックス、縦横無尽に繋がる28作品が巨大な1作を作り上げる前代未聞の文学的企み! デビュー20周年、著者の最高のガイドブック。解説とコメンタリー付き破格のスケールの作品群を発表しながら、現代文学で唯一無二の地平を切り…

古川日出男『ミライミライ』(新潮社)

第二次世界大戦後北海道はソ連に占領、鱒淵いづるを指揮官とする抗ソ組織はしぶとく闘いを続ける。やがて連邦国家インディアニッポンとなった日本で若者四人がヒップホップグループ「最新"」(サイジン)を結成。だがツアー中にMCジュンチが誘拐、犯人の要求…

「他者(女性)を理解する」こと/『ペンギン・ハイウェイ』と『寝ても覚めても』を観て

今年は、個人的に思い出深い小説が次々と映画化された年として印象に残りそうだ。 『パンク侍、斬られて候』『ペンギン・ハイウェイ』『寝ても覚めても』『ここは退屈迎えに来て』……まだ未公開のものもあるが、それぞれが原作の良さを理解し、意味のある映像…

最果タヒ『星か獣になる季節』(ちくま文庫)

詩人・最果タヒによる小説。初出は『早稲田文学』2014年冬季号。2015年2月に筑摩書房より単行本として出版。2018年2月に文庫化。 地下アイドル・愛野真実の応援だけを生き甲斐にするぼくは、ある日、彼女が殺人犯だというニュースを聞く。かわいいだけで努力…

高橋源一郎『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』(集英社新書)

2017年12月15日発売。 子供たちの独立国家は、本当に実現するのか?そこで浮き彫りになる、日本の現在(いま)とは?本書は、竹島問題、憲法改正、象徴天皇制などのアクチュアルなテーマを、架空の小学校を舞台に平易な言葉で論じる、一八世紀以前にヴォルテール…

勝手にふるえてろ(映画)

芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説の映画化で、恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走する様を、松岡茉優の映画初主演で描くコメディ。OLのヨシカは同期の「ニ」からの突然の告白に「人生で初めて告られた!」とテンションがあがるが、「ニ」との関…

高橋源一郎『恋する原発』(初出『群像』2011年11月号/河出文庫2017年3月)

高橋源一郎の長編小説。初出は『群像』2011年 11月号。同年11月17日に単行本化。2017年3月に文庫化。 大震災チャリティーAVを作ろうと奮闘する男たちの愛と冒険と魂の物語。(Amazonの商品紹介より)

町田康『ギケイキ』

作家であり、パンクロックシンガーでもある町田康の源義経を主人公にした現代語大河小説(全4部作の予定)。単行本は2016年5月12日発売。 8.0/10.0 町田康の「現代語訳」といえば『日本文学全集シリーズ』の『宇治拾遺物語』が昨年話題になったが、本作もそ…