海辺にただようエトセトラ

音楽や映画、本の感想をつらつらと。

カズオ・イシグロ『日の名残り』(ハヤカワepi文庫)

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英国の日系人作家であり、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの1989年刊行の長編小説。本書で世界的に権威のある文学賞ブッカー賞を受賞。

格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞ブッカー賞受賞作。(Amazonより)

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小笠原博毅、山本敦久『やっぱりいらない東京オリンピック』 (岩波ブックレット)を読んで

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東京オリンピックパラリンピックが抱える諸問題を徹底検証.市民がこうむる多大な負担,過度な重圧に晒されるアスリートたち,歪められるスポーツのかたち,そしてますます不自由になる社会…….「決まったものは成功させよう」という思考停止を抜け出し,「こんな祭典は必要ない」とハッキリ言うための論点を提示する.

https://www.iwanami.co.jp/book/b432937.htmlより)

岩波ブックレット」という、岩波書店から出ている小冊子シリーズがある。このシリーズは、現代社会で話題になっているものをテーマにし、70ページほどで語られる。価格も500円ほどなどで気軽に読めることが利点だ。

憲法平和人権環境などがテーマとなっているものが多い。(Wikipediaより)

とのことで、論調は割とリベラル寄りのものが多い印象である。

今回手に取ったのは、人によっては「みんなが楽しむムードをぶち壊しにするな!」と怒り出しそうなタイトルであるが、冒頭の紹介文にもある通り「決まったものだから成功させよう」という同調圧力や、そもそも「みんなで成功させる」の「みんな」って? 何をもって「成功」なの? など、ニュースを目にするたびに予算が膨張し、「低予算五輪」という嘘も目に余る状況なので一読することに。結果、いくつか気づきがあったので書き記しておきたい。(※まだ詰めたい部分もあるので追記予定です。)

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ミヒャエル・ハネケ監督作品 ショート感想集

昨年観た『ハッピーエンド』で、「なぜ今までスルーしていたのだろう!」というくらいミヒャエル・ハネケ監督ドンピシャだったので、代表的な過去作をレンタルで鑑賞。

前回の『響け!』シリーズの記事同様、ショート感想集をお届けします。
掲載は製作順。

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「響け!」シリーズ劇場版 ショート感想集

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京都アニメーションが制作した、弱小高校吹奏楽部が全国コンクールを目指す『響け! ユーフォニアム』シリーズの最新作が公開された。*1
昨年公開された番外編とも言える『リズと青い鳥』をレンタルで視聴したところ、とてつもなく素晴らしい作品だったので劇場版過去2作も視聴し、最新作である『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』も劇場で鑑賞。

以前吹奏楽部の知り合いに、「吹奏楽部は運動部と文化部の嫌な部分が合わさっためんどくさい部活」と聞いていたのだが、本シリーズも確かにそういった側面が描かれたりもしていて、いわゆる「萌え」一辺倒な作風ではないので普段アニメーションを観ない人でも楽しめると思う。

残念ながらアニメシリーズは未見なのだが、各作品の感想を短めに書いていきたいと思う。紹介は公開順。

*1:原作小説もあり。

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アイドルに「不完全性」を求めること

連日の気温の寒暖差が激しいせいか、体調を崩してしまった。
体調が良くないと頭もうまく回らないし、頭がうまく回らないと仕事もうまく進まない。
そんな時に仕事と関係ないことに考えを巡らし、文章にしていくと不思議と頭がチューニングできて心が整理され、体調も良くなり仕事もうまくいき、年収も上がる(嘘)

ということで、今回は前々からちょこっと考えていたアイドルについての文章を書こうと思う。
といっても、僕自身アイドルに詳しいわけではないので見当違いな記述があったらすみません。あとアイドルに詳しい人にとっては、目新しいことは一切書かれていないと思います。

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ペパーミント・キャンディー/Peppermint Candy

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※以下に映画.comのあらすじを引用していますが、物語の構成にも言及しているので、少しのネタバレも苦手な方は読まれないことをお勧めします。あらすじに続く僕の記事も同様。

韓国現代史を背景に1人の男性の20年間を描き、韓国のアカデミー賞である大鐘賞映画祭で作品賞など主要5部門に輝いた人間ドラマ。「オアシス」「シークレット・サンシャイン」のイ・チャンドン監督が1999年に手がけた長編第2作。99年、春。仕事も家族も失い絶望の淵にいるキム・ヨンホは、旧友たちとのピクニックに場違いなスーツ姿で現れる。そこは、20年前に初恋の女性スニムと訪れた場所だった。線路の上に立ったヨンホが向かってくる電車に向かって「帰りたい!」と叫ぶと、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させた妻ホンジャとの生活、惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した光州事件。そしてヨンホの記憶の旅は、人生が最も美しく純粋だった20年前にたどり着く。2019年3月、イ・チャンドン監督の「バーニング 劇場版」公開にあわせて、4Kレストア・デジタルリマスター版が日本初公開。

https://eiga.com/movie/49159/より)

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NO NUKES 2019 2nd DAY@豊洲PIT 坂本龍一+大友良英/「演奏以前」の、圧倒的パフォーマンスを見て

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脱原発」をテーマに掲げた音楽イベント、「NO NUKES 2019」の二日目に参加した。

テーマそのものに惹かれたのも事実だが、本心はもっと下世話で、このラインナップでチケ代4900円かよと思ったからだ。

若手から中堅まで揃えたバンドの中に、坂本龍一大友良英が腰を据えているイベントなんて中々ないだろうし、実際非常に楽しめた1日だった。

以下では、特に印象に残ったアーティストについて書きたい。

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